三国与太噺 season3

『三国志演義』や、吉川英治『三国志』や、日本の関帝廟なんかに興味があります。

三国

張華『博物志』と陳寿『三国志』における文章合致

以前に話題にしました張華『博物志』と陳寿『三国志』の関係について、今度は真面目に考えてみます。 問題は、『三国志』東夷伝東沃沮にある文章と『博物志』卷二異人及び異俗にある文章とがほぼ合致していることです。 『三国志』東夷伝東沃沮 毌丘儉討句麗…

張楊の字について

どうでもいいことだから、これまで誰からも指摘されなかったのでしょうが・・・(;・д・) 張楊、字は稚叔、雲中の人なり。(『三国志』張楊伝) この通り張楊の字は「稚叔」であると『三国志』にはあります。 だがコイツを見てくれ。 ウィキペディアの「張楊」…

張華『博物誌』と陳寿『三国志』

昨日の記事で言いました通り、張華は西晋で陳寿を孝廉に挙げるなど度々に世話をし、また『三国志』を高く評価した人物です。 また張華は都督幽州諸軍事として出鎮していたため朝鮮以東の地理に詳しく、そのため『三国志』東夷伝は張華の見識に拠る所が大きか…

張華『博物誌』の女国

こないだの漢文訓読会の時に、こちらの『博物誌』訳を見ててみっけたのですけど、「古代中国奇書館」-張華の博物誌(2.20) 海中に一つの国があり、女性だけで、男性は住んでいない。聞くところによれば、布衣を纏って現れ、海中から浮き上がって来ると、衣服…

曹丕の後継者

第三回、文帝太子ダービー!(゚Д゚≡゚Д゚)イエー 番 名前 父母 性齢 脚質 国 オッズ 予想 1 曹協 曹丕李貴人 牡6 逃げ 贊王 6.8 2 曹蕤 曹丕潘淑媛 牡4 先行 北海王 5.0 ◎ 3 曹鑒 曹丕朱淑媛 牡3 逃げ 東武陽王 5.9 4 曹霖 曹丕仇昭儀 牡5 差し 河東王 4.2 ○ 5…

魏の夫人位

甄洛は三ヶ日までじゃなかったかって? スマン、ありゃあウソだった(゚ω゚) 「てぃーえすのワードパッド」‐甄夫人2 『三国志』本文では甄洛はしばしば「夫人」と呼ばれていましたが、てぃーえすさんは今朝の記事により、それが彼女の地位を表す称号ではなく単…

甄夫人

正月三ヶ日は甄洛いじめ m9( ゚д゚) 昨日の記事を、てぃーえすさんにトラックバックして頂きました。 「てぃーえすのワードパッド」−甄夫人 ただ昨日の記事を書きながらも若干疑問に思っていたことがあります。 甄洛が王夫人という、とても高い位にあったこと…

甄洛の失寵

太子(曹丕)王位に即き、后(郭后)夫人と為り、踐阼するに及び貴嬪と為る。甄后の死、后の寵に由る也。黄初三年、將に后位に登らんとし、文帝立てて后と為さんと欲す。(『三国志』文徳郭皇后伝) ここで言われる「貴嬪」という地位ですが、これは曹丕が即位して…

甄洛の立場は?

あけましておめでとうございます。 昨年は曹叡をディスったり『三国志演義』に傾倒したりした一年でしたが、本年も変わらずがんばって曹叡していきたいと思います。 もっか曹叡に関して興味があるのは、その母親である"甄洛"がその生前、曹丕の妻妾の中では…

平成二十三年のまとめ

てぃーえすさんのまとめが楽しそうだったので僕も真似しましたヽ(゚∀゚)ノ こうやって見ますと、下半期から露骨に演義厨へと傾倒していたことがよくわかります(´・ω・)

架空の父 【夏侯令】

『三国志』曹爽伝に「夏侯文寧の女、名して令女。」とある通り、割鼻で有名な夏侯令女の父親は夏侯文寧と言います。 それが夏侯令女を「夏侯の令女」ではなく「夏侯令の女(娘)」とする誤りがありまして、よって夏侯令ってゆうほんとはいないはずのお父さんを…

長沙の劉氏、劉封

劉封はもと羅侯の寇氏の子にして、長沙劉氏の甥なり。 先主荊州に至り、未だ継嗣あらざるを以て封を養い子と為す。 自分これまで劉封の出生を「羅侯の寇氏の子」「異姓養子」という印象を強く持ちすぎて、長沙劉氏の甥であるという設定を完全に見逃していま…

曹魏皇族の郷公

諸侯王の庶子の封建というのは、たぶん漢武帝の推恩令に始まると思います。しかしこれは単に次男坊に食い扶持を恵もうというものではなく、その真意は広大な諸侯王の領土を削ることにありました。これが後漢になり諸侯王の権力が大幅に削がれますと、庶子封…

せめぎ合う十三歳 【陸鬱生】

張白の妻は陸績の娘である。鬱林で生まれたので名を"鬱生"という。 張温の弟である張白に嫁いだが、張温が罪を被ったため張白らは配流された。鬱生は離婚され、また競って婚姻の申し出があったものの、決して再婚しようとはせず、張温の姉妹三人を大切にした…

長楽郡公主 【劉曼】

この劉曼という女性が三国志大戦に追加された時に、一体どれほどのユーザーが彼女のことを知っていたでしょうか。セガもすごい重箱を突っついたものです。それとも既に何かの創作に登場していたのでしょうか? 魏書曰:十二月丙寅,賜山陽公夫人湯沐邑,公女…

関羽の娘で村おこし 【関銀屏】

関羽の三番目の娘。父親ゆずりの武勇を持ち、女性であるにもかかわらず、諸葛孔明の南蛮討伐に参加したと言われている豪傑。孫権の息子との縁談話が持ち上がったが、父関羽が「犬の子に虎の子はやれぬ!」と断り、蜀と呉の関係が悪化した。 「父上譲りのこの…

貞節と義理 【夏侯令女】

うちのブログ、「三国志 女性」という検索ワードからいらっしゃる方が他のダントツで多いんです。以前に仙石先生の著書の感想を書いたためだと思いますが、世間ではやはりそういう需要が多いというか・・・そうですよね、ぼくも孫大虎大好きだし・・・董白は…

司馬順の抗議

順字子思,初封習陽亭侯。及武帝受禪,順歎曰:「事乖唐虞,而假為禪名!」遂悲泣。由是廢黜,徙武威姑臧縣。雖受罪流放,守意不移而卒。*1 司馬順は司馬八達の七番目、司馬通の次男にあたります。司馬昭の従弟、司馬炎の族父(従兄弟違い)ですね。司馬炎によ…

曹魏皇族の侯

曹魏の皇族は原則として王・公に封じられ、逆に曹魏の王・公も皇族に限られていたようです*1。 ですが一時的に侯に封じられていた皇族がわずかにおりまして、この侯の爵位をどう見るかが目下問題になっております。臣下が与えられていた県侯などと同様の「列…

曹魏皇族の公

昨日に引き続きまして、今日は公爵です。 諸侯を公に封建することは光武帝の初期にも行われていましたが本当にごく最初期のみで、曹魏のように王と公とで兄弟を差別することは後漢でもこの後の西晋でも見られない処遇です。 (1)曹琬・・・長子公(222〜253) …

曹魏皇族の県王

曹魏の諸侯は、221年に公であったこと、224年〜231年に県王であったことを除けば、原則として一律で郡王に封建されています。ですが一部ではその原則から外されて県王・公・侯などに留められた者がいました。 このように爵位によって諸侯の間に格差…

魏の魯相

彭城穆王權字子輿,宣帝弟魏魯相東武城侯馗之子也*1 なあ〜〜〜 大事な事、とっても……なんだよ… 魏の魯相って……『魯王がいなくても国相なの』……? 素朴な…疑問なんだよ メチャ最高に……答えてくれよ… もし…『魯相』が"魏にいたとしたら"『魯王』もよ〜〜〜 "…

陳寿と丁固

この流れ・・・契約するしか! 「てぃーえすのワードパッド」‐究明(4/21) 「雲子春秋」‐陳陳丁(4/22) これは意外な事実でした。 そして雲子さんの記事を読んで思い出したのですが、この丁固、韋昭『呉書』には立伝されていたらしいですよ。満田先生のご著書…

皇族筆頭その3 【曹楷】

曹楷は曹彰の子で、223年に父が亡くなって任城王の位にありましたが、何より孫盛『魏氏春秋』において皇帝曹芳の父親と指摘されている人物であります。 もし『魏氏春秋』の通りなら、なぜ曹叡はいきなり初代皇帝の系統ではない曹芳を後継ぎにしてしまった…

雍丘王曹植と陳留王曹峻

陳留郡 陳留有鳴鴈亭。浚儀本大梁。尉氏。雍丘本杞國。襄邑有滑亭。有承匡城。……(『後漢書』郡国志陳留郡) 曹植は223年〜226年の間に雍丘王であり、曹峻は224年まで陳留王でした。 王国の中に王国が…という訳ではないのでしょうが、こういうことが…

降格されなかった諸王 【曹植と曹叡】

・曹魏諸王公一覧表 黄初五年、それまで郡に封じられていた諸侯王を県王に降格させるとの詔が出されました。なので当時の諸王の列伝には例外なく黄初五年(ないし六年)に降格された旨が記載されています。 この二人を除いては。 普通だったら特別に降格されな…

曹魏諸王に関する、ちくま訳の大きな誤訳

以前、コメントで教えていただいたのですが改めて記事に。 【曹宇伝】 ・原文 五年,改封單父縣。太和六年,改封燕王。 ・ちくま訳 五年(二二四)、改めて単父県王とされ、六年(二二五)、燕王に改封された。 【曹峻伝】 ・原文 五年,改封襄邑縣。太和六年,…

燕国相夏侯恵

威弟惠,樂安太守。 文章敍錄曰:惠字稚權,幼以才學見稱,善屬奏議。歷散騎黄門侍郎,與鍾毓數有辯駮,事多見從。遷燕相、樂安太守。年三十七卒。*1 夏侯恵がいつ燕国相に遷ったか定かではありませんが、劉劭伝を見ると青龍年間では散騎侍郎にあったようで…

阿翁と呼ばれて

曹幹は一名良という。良は本来陳妾の子であったが、良が生まれると陳氏は死んだ。太祖は王夫人に彼を養育させた。良が五歳のときに、太祖は病気が重くなったので、太子に遺令を与えた、「この子は三歳のとき母をなくし、五歳で父を失うことになる。だからお…

関平の字

だいぶん前の記事ですが・・・ 「てぃーえすのワードパッド」‐定国(2009/01/7) なお、関平の字は史実、演義において記されていないが、民間伝説において字が存在している。一つが坦之(たんし、か)と読むものである。……もう一つが定国(ていこく、か)と読…