三国与太噺 season3

『三国志演義』や、吉川英治『三国志』や、日本の関帝廟なんかに興味があります。

日本の三国志

箱崎みどり『愛と欲望の三国志』

僕もこれから読むので、なにかこう気の利いた宣伝なんかはできないのだけど、 ただとてもいい本なので、どうかぜひ読んでください。 愛と欲望の三国志 (講談社現代新書) 作者: 箱崎みどり 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/08/21 メディア: 新書 この商…

吉川英治記念館閉館

いささか前のニュースになるけれど。 青梅市二俣尾にある吉川英治記念館が、今年度いっぱいで閉館することになった。・吉川英治記念館の平成30年度の開館について―草思堂から 吉川英治記念館学芸員日誌 http://yoshikawa.cocolog-nifty.com/soushido/2018/10…

諸葛亮はいつから東南の風を呼ばなくなったのだろうか

このあいだ『吉川三国志』の諸葛亮の論文を書いたとき、ひとつどうしてもわからないことがあった。 孔明は、それに対して、こういうことをいっている。 「むかし、若年の頃、異人に会うて、八門遁甲の天書で伝授されました。それには風伯雨師を祈る秘法が書…

『三国志研究』13号に論文と書評を書きました

とてもとても久しぶりに、吉川英治『三国志』について書いた。 今年の『三国志研究』13号に載っけてもらった、「大衆と伍す英雄 ―吉川英治『三国志』における諸葛亮像の形象」という論文です。 諸葛亮は、『吉川三国志』のなかでは曹操に並んで、いや曹操…

全国関帝廟マップを作りたい

秋くらいから、なんか関羽ブームが来てます。僕の中で。 一時期、尚書省三國志部の教団さんと一緒に日本のあっちこっちの関帝廟を調べてまくるってことをやってました。 日本で関帝を祀る所といえば、これまで哲舟さんがリストアップされていた全国関帝廟ガ…

呂玲綺にまつわる略年表【暫定版】

先日の関銀屏に続き、呂布の娘であるという呂玲綺の足跡も追っていきます。 相変わらず各種メディア方面の三国志には弱いので、いろいろ教えてくださると幸せです。 2003.6 コーエーの歴史シュミレーションゲーム「三國志戦記2」が発売される。 本作…

公孫瓚の娘

最近、「さんぱず」とかの三国志ゲーで、「公孫瓚の娘」ってのを見かけます。 実際にプレイしてないんで詳しいことはわかんないんすけど、はて公孫瓚に娘がいたっけ? 攻略wikiを見ると、どうやらこうゆう設定らしいんですけど。 公孫女 公孫瓚の娘。公孫瓚…

長崎聖福寺、福済寺の関帝像

昨日の記事の最後で、聖福寺、福済寺の関帝についてちょっと触れました。 そもそも長崎には、江戸時代以来有名な唐寺(中国風の寺院)が四つありました。興福寺、崇福寺、聖徳寺、福済寺の「四福寺」です。 このうち興福寺と崇福寺に関帝像があることは有名…

シーボルトが見た関羽?

関羽を求めてネットをうろついていたら、こんな画像を見つけました。 http://www.lib.pref.fukuoka.jp/hp/gallery/nippon/kg/n2-305k.html *1 まごうことなき関羽ですね… *1:末木文美士ら編『シーボルト『日本』図録』巻三(雄松堂書店、1979)より

日本最古、京都大興寺の関帝像について

*1 以前にブログに書いた京都大興寺の関帝像を、先日の三国志学会の折に見てきました。 通常は非公開なのだそうですが、NPO三国志フォーラムの清岡さんや教団さんがツアーを企画し、お寺さんとの交渉をしてくださったんで、スムーズに拝観できました。 それ…

宮城谷昌光『三国志読本』への批判 「新しい三国志」について

先週、宮城谷昌光の『三国志読本』をめぐって、ツイッターでもろもろの意見が飛び交いました。ひろおさんから始まり、僕が食いついたことで広まった話の様子は、ひろおさんの方でまとめられております。 http://3guozhi.jp/l/tn.html その中で、議論が飛び火…

趙雲の嫁なんているはずがない

ただの思いつきなんで、適当なこと書いてたらすみません。 趙雲って、びっくりするほど女性関係のイメージがない人物じゃないですか。 もちろん趙雲には趙統趙廣という息子がいますから、当然夫人だっていたはずです。当たり前です。 でもググってみると、た…

関銀屏にまつわる略年表【暫定版】

情報提供お願いします! 1986.8 湖北省群衆芸術館が『三国外伝』を出版。 民間に伝わる三国志説話を収集したもので、雲南省曲靖県澄江で採録したという関三小姐説話も収録された。1990.8 上記の『三国外伝』を翻訳した、立間祥介ら訳『三国志外…

「現代三国志」の女性たち  −三国志大戦3を中心に

ふと思うところがあって、「三国志大戦3」に登場した女性人物を調べました。 やたらマイナーな人物が多かったとプレイ当時も感じていたのですが、改めて調べてみると気になる傾向が見えてきました。 以下は、三国志大戦シリーズでの登場順に並べて一覧にし…

張飛の蛇矛

前半は、上原究一さんの論文「丈八蛇矛の曲がりばな ―張飛像形成過程続考―」(『三国志研究』七、2012)に依っています。後半の日本の話は袴田の独自調査です。 張飛の蛇矛についてはネットだとずいぶん違ったことが書かれているので、自分の知っている…

『通俗三国志』の回題に見る三国志観

別の用事で『通俗三国志』の目次をぼーっと見てたところ、ちょっと面白いことを知りました。 三国与太噺 ‐『通俗三国志』目次(付李卓吾本) いわずもがな、『通俗三国志』は李卓吾本『三国志演義』を底本として翻訳したものですから、当然ながら目次の回題…

京都大興寺、日本最古の関帝像か

はじめて知りました。 京都の大興寺というところに、足利尊氏が取り寄せたという関帝像があるらしいですよ。 日本最古、かもしれないとのことです。 http://www.asahi.com/and_M/information/gallery/20130329syaji/07.html http://www.zekkeikana.com/kyoto…

吉川英治『三国志』(平成25年)

今月の『三国志ナビ』をもって、ついに新潮社版の『吉川三国志』全十巻+αが出そろいました。吉川英治の著作権が切れた"その月から"刊行を始めた本シリーズも、ようやく全冊を並べられることができました。 こうして見るとさすが壮観です。なんといっても長…

関羽の郵便屋さん

「わたくしは姓を胡、名を華と申します。いま息子の胡班と申すのが、滎陽太守の王植殿のもとで従事をいたしておりますが、将軍がもしあのあたりをお通りになるようでしたら、息子に手紙をことづかっていただけないでしょうか?」 ―『三国志演義』第二十七回…

『吉川三国志』研究、参考文献目録

学部の頃に国文学を専攻して以来、大学院で中国学をやっている今も、『吉川三国志』を読み解こうと(本来のテーマとは別に)ちょっとアプローチを続けていました。せっかくなので、今まで使ってきた参考文献の目録をアップします。 僕はもっぱら「三国志」の…

竹中半兵衛と今孔明

『センゴク天正記』11巻、初期からの主要人物であった竹中半兵衛が陣没するこの巻は、かかる引用で締めくくられています。 秀吉の御座す平山に行きて六月中の頃 終に失せにしそかし、秀吉限りなく悲しみ劉備孔明を失いしに劣らずという 『豊鑑』 秀吉を劉…

『吉川三国志』草莽の巻 「劉安、人を喰った話」

吉川英治が原典とした『三国志演義』(ならびに『通俗三国志』)には、以下の3か所に人を喰った話があります。 第9回、董卓誅殺後に李儒が怨みある民衆から喰い殺される場面。 第19回、徐州から逃れてきた劉備をもてなそうと、猟師劉安が自分の妻の肉を…

『吉川三国志』群星の巻 「貂蝉」

もともと貂蝉は中国の「三国志」説話の中から発生した人物であり、史料に典拠がある人ではありません。そのためか日本の「三国志」作品では、すごい色々な貂蝉が登場します。本当に千差万別です。『秘本三国志』では仏教を信仰する胡人で、『蒼天航路』では…

『吉川三国志』桃園の巻 「劉備の母」

だが、二歳から四十年まで、自分が会ったり知ったりして来た女性のうちへ、現在の周囲も入れ、お前は一体、いちばん誰に恋しているのかと問われれば、僕は真っすぐにこう答えるよりほかにしかたがない。 ――死んだおっ母さん。 吉川英治『窓辺雑草』 吉川英治…

『画俗三国志』

昨年秋に訪れた「時空をかける三国志」展では勉強になることがたくさんでしたが、特に蒙を啓かれたことが、この『画伝三国志』の存在であります。 『画伝三国志』 ・全十篇七十六巻 ・文政十三(1830)年〜天保六(1835)年刊行 ・書肆 江戸両国 大…

『通俗三国志』・『絵本通俗三国志』目次(付緑蔭堂本)

『通俗三国志』(元禄五刊)と『絵本通俗三国志』(天保十二刊)は、テキストはほとんど一緒なので、目次もほぼ変わりありません。 ただ前者が全50巻で後者が全75巻なので1巻ごとの収録話数が違っており、また字句にも微妙な違いがない訳ではありません…

湖南文山『通俗三国志』の初版本

【審議中】( ´・ω)(´・ω・)(´・ω・`)(・ω・`)(ω・` ) 元禄二年から五年に刊行された、湖南文山『通俗三国志』の初版本です。たぶん 300年前に生まれた、日本で最初の「三国志」であります。たぶん

『吉川三国志』桃園の巻 「昭和15年の序文」

1962年9月7日に亡くなった吉川英治、その著作権がこの1月をもって切れました。 すると、早速も早速、早くも新潮社文庫さんが『吉川三国志』の再版をお出しになられました。これまで吉川英治の著作はほぼ講談社が独占していたものですから、今後いろん…

和製蛇矛の曲がりばな その2

・「三国与太噺」‐丈八蛇矛の分かればな ・「三国与太噺」‐和製蛇矛の曲がりばな その1 『絵本通俗三国志』によって広まってしまった三叉槍の蛇矛。 では、日本の蛇矛が「曲がりはじめる」のはいつ頃なのでしょうか。 そこで注目しましたのは、『絵本通俗三…

和製蛇矛の曲がりばな その1

以前の記事で、張飛の蛇矛が「曲がりくねった」状態になるのは近現代になってからであるということ、『絵本通俗三国志』の蛇矛が今の形とは全然似ても似つかないことを書きました。 「三国与太噺」‐丈八蛇矛の分かればな 『絵本通俗三国志』は近世近代の「三…