三国与太噺 season3

『三国志演義』や、吉川英治『三国志』や、日本の関帝廟なんかに興味があります。

日本の三国志

国会図書館関西館 小展示「時空をかける三国志」

国立博物館に行ったその足で、今月8日、僕は国会図書館の関西館にて開催されていた展示「時空をかける三国志」を観に行きました。 国会図書館が所蔵する「三国志」を、一列に並べたというこの展示。殊に、普段あまり注目されることのない日本の「三国志」に…

役者絵「寿帝公関羽」

今日の授業で見学した図書館におもしろいものがあったので。 こちらの浮世絵です。 画像はこちらの早稲田さんから引っ張らせていただきました。詳細がリンク先にあるのでご覧ください。また、こちらの成田屋さんのページにも紹介がありました。 いわゆる役者…

「貂蝉の最期」の系譜 −暫定バージョン

貂蝉って人は、もともと民間伝承出身で、しかも『三国志演義』でもって大きく取り上げられたということも加わって、作品によっていろんな人物像のバリエーションを持ってる人です。漢の忠臣であったり、呂布を慕う女性であったり、また関羽と深い仲になった…

丈八蛇矛の分かればな

蛇矛(だぼう、じゃぼう)は、柄が長く、先の刃の部分が蛇のようにくねくねと曲がっているため、そう呼ばれる矛。 ―wikipedia‐「蛇矛」の項 『三国志演義』張飛の得物が「穂先の曲がりくねった長矛」であることはもう言わずもがなであろうと思います。 とこ…

夢梅軒章峯と称好軒徽庵

『通俗三国志』を翻訳した湖南文山に関しては、一説には京都の義轍と月堂の兄弟のことであるとされていますが、彼らはこの他にも『通俗漢楚軍談』や『通俗両漢紀事』、『通俗唐太宗軍鑑』といった通俗小説も翻訳していました。 そしてその時に用いられたペン…

『通俗続三国志』、第一巻のストーリーについて

読んでいただくと分かる通り、第一巻はかなり時系列が前後しています。 ・司馬炎が統一を祝って宴する →王渾・王濬の軍が孫呉を下す →旧呉の遺臣と晋軍が戦う →蜀漢の滅亡と遺臣たちの亡命までが第一巻の大まかな流れになりますが、王渾王濬の件、蜀漢の遺臣…

柴田錬三郎『三国志』(昭和27年)

柴田錬三郎と言えばいわゆる「柴錬三国志」こと『英雄ここにあり』でよく知られていますが、柴田先生はそれ以前から児童向け、軽い読み物としてダイジェスト的な「三国志」小説をいくつか書かれています。本書はその中でもかなり初期に書かれたもののようで…

『李毛異同(6) ‐袁紹の系譜

何進が之を視れば、乃ち司徒袁逢の子、袁隗の姪。名を紹、字は本初なり。(「毛本」第二回) 「毛宗崗本」が「袁隗の甥」とするところを、「李卓吾本」では「袁安の孫」としています。 「袁安の孫」とした方がその輝かしい家系が一目に分かりますが、一方でこ…

『李毛異同(2)』 ‐劉備母を拝す

次日、桃園中において、三人焚香し再拜して說誓し曰く……。玄紱を拝して兄と為し、關羽これに次し、張飛弟と為る。(「毛本」第一回) 「毛宗崗本」では削られておりますが、「李卓吾本」においてはここで「共に玄徳を拝して兄と為し、関羽これに次し、張飛を弟…

『李毛異同(1)』 ‐モノローグ

『三国志演義』のエディション、「李卓吾本」と「毛宗崗本」の比較をします。 「―そもそも天下の大勢は、分かれること久しければ必ず合し、合すること久しければ必ず分かれるもの……。」 その王朝観で有名な、『三国志演義』の導入部分です。 天下が統一され…

30年に一度の三国志ブーム

特にちゃんと調べたわけでなく、卒論をやっとる時にそんな印象を受けただけなので、マヤの予言みたいな感じで読んでいただきたいのですが(・ω・) スタートは1840年頃、天保年間の『絵本通俗三国志』の刊行です。 その30年後の1870〜80年代、明治1…

吉川英治『三国志』(昭和15年)

吉川英治『三国志』について書きました 今また書いています|ω・`) きっとそのうち書きあがると思います。 書きあがりました。 袴田郁一「吉川英治『三国志』の原書とその文学性 ―近代日本における「三国志」の受容と展開」(『三国志研究』八、二〇一三)

12月3日は周瑜の命日

ツイッターで聞き思い出しました。 今日は、周瑜が亡くなった日なのです ( -ω-)人ざまぁ ちなみにこの12月3日の典拠について、現行の陳寿『三国志』や『三国志演義』には見られないため、その出典が一時期話題になっていたようです。 その様子はこちらの…

青梅、茶を煮て英雄を論ず

柴田錬三郎『柴錬三国志』(昭和41年)

卒論の没ネタを横流し(´・ω・`) 正式なタイトルは『英雄ここにあり』。昭和41年から43年まで連載。*1 いわゆる『柴錬三国志』ですね。『秘本』や『北方』などと並んで現代でも割とポピュラーな「三国志小説」だと思います。 ストーリーは桃園結義から出師…

『反三国志』華歆と『三国志演義』李儒の最期

「今日の記事はいささか残酷な表現が含まれる」 「よってそれらが苦手な者は閲覧を控えた方がよい」 「仁者の風上におけん、まったくけしからん話だな」

「諸葛亮にして死せざりせば」補足

先日こちらで記事にした架空三国志物語「諸葛亮にして死せざりせば」について。 作者は清朝雍正帝から乾隆帝期の夏綸という人。この人に「南陽楽」という戯曲があるのですが、その粗筋を久保天随が『新訳演義三国志』の付録として載せています。これが「諸葛…

『吉川三国志』のために

最近の検索ワードを見ていたら何やら吉川三国志の古い版本に関する単語がやけに目立ちまして、おそらく同じ方なのでしょうか?随分珍しいことを検索されているなと思いましたが・・・もしまだうちのブログをご覧でしたら、自分の分かる範囲で書ければと思い…

諸葛亮にして死せざりせば

先日京都に遊んだおり、「諸葛亮にして死せざりせば」と題する短篇が古い一冊の書物に収録されているのを発見しました。読んでみると、まさしく三国時代の戦争について記してあり、諸葛孔明の五丈原以降に関するすべての記述が、『三国志演義』と異なってい…

野村愛正『三国志物語』(昭和15年)

戦時中に出版された三国志モノには、代表的なものとして以下の四作品があります。 昭和14年に出版された村上知行『三国志物語』。 昭和14年から18年に連載された吉川英治『三国志』。 昭和16年に出版された弓館芳夫『三国志』。 そして昭和15年に…

弓館芳夫『三国志』(昭和16年)

桑原武夫先生の論文「『三国志』のために」はその中で、当時(1942年)に受容されていた「三国志」創作として3つの作品が挙げています。吉川英治の『三国志』、村上知行の『三国志物語』、そしてこの弓館芳夫の『三国志』ですね 。『村上三国志』については以…

レジュメ「『吉川三国志』成立の過程と環境」

昨日までゼミに行っておりまして、これはそこで発表した時のレジュメです。 ぼくのレジュメなんでクオリティはアレなんですけど、せっかく作ったのにゼミ発表で使うだけじゃもったいないと思いまして、ぱなしておきましょう式ですね。 http://wiki.livedoor.…

池田東籬亭『通俗絵本三国志』

先日、うちのブログに「池田東籬亭 通俗三国志」のキーワードでいらっしゃった方がいらっしゃいました。 東籬亭をググってしまうなんて相当の猛者勢とお見受け致しましたが、もしこの方が池田東籬亭と『通俗三国志』の関係について基本的な情報を探しておら…

『通俗三国志』の校訂は行われていたか

元禄年間に出版された『通俗三国志』は当時大変な人気であり、明治に至ってなお多数の出版社から繰り返し刷られていました。現在国会図書館が蔵書しているものに限っても、実に27種にもなります。 それらにはそれぞれ校訂者がついており、その中には東亜堂…

幸田露伴校『通俗三国志』解題の要約

明治期にとっても沢山出版された『通俗三国志』群*1の中でも代表的なエディションである幸田露伴校訂の『通俗三国志』です。 東亜堂から明治44年に出版されており、「明治版『通俗三国志』」としては後発の部類ですね。上田望先生の分析によれば流行の第三…

劉備の初恋 【芙蓉姫】

『吉川三国志』の数少ないオリジナルキャラクター、芙蓉姫。吉川流が光る序盤を象徴するようなヒロインです。 吉川オリジナルでありがなら、横光三国志や柴練三国志、三国志大戦など他の創作・媒体にも時々姿を見せるなど、三国志の和製オリキャラとしてはけ…

吉川英治と張郃

苦徹成珠の吉川さんも"三国志"だけは、リラックスに書かれたようである。楽しんで書いておられる風でもあった。馬上からバラリンズンと斬殺した人物を、後の場面で活躍させて、飛んだ失敗したよと、吉川さんが苦笑したようなお愛嬌もあった。*1 やはり先生も…

吉川英治『三国志』の初版本

(*´ω`*)ドヤァ・・・ 昭和15年に大日本雄弁会講談社より出版された、吉川三国志の初版本! なかなか手に入らないと思われる初収本の、さらに初版です。国会図書館でも初収本は読めるんですけど、しかし何巻か欠落があり、また初版ではなく昭和17年の再版…

久保天随『新訳 演義三国志』序文の要約

久保天随『新訳 演義三国志』は、それまで湖南文山訳『通俗三国志』(李卓吾本訳)が大勢を占めていた日本においてし、初めての毛宗崗本完訳として1912年に出版されました。またあの吉川英治が少年の頃に愛読したとされていることでも有名です。*1 この叙…

桑原武夫「『三国志』のために」

☆桑原武夫「『三国志』のために」 (「文芸」(1942年8月)、所収『桑原武夫全集3』(1968) ) ○三国志への親しみ 天野貞祐『学生に与ふる書』に、幼い頃愛読したと回顧 筆者の親戚にも親しんでいる者多し。庶民への浸透も大きい ・『通俗三国志』による流行 神…