三国与太噺 season3

『三国志演義』や、吉川英治『三国志』や、日本の関帝廟なんかに興味があります。

西晋の滅亡

建興四(316)年、長安が異民族によって陥落すると、西晋の皇帝である愍帝もまた捕らえられます。 愍帝は虜囚として屈辱を味わわされた挙げ句、翌年、弑逆されました。 そんな愍帝の最期について、『太平御覽』に引かれる逸文では、こう書かれます。 許肅…

三国志フェス2015と関帝廟ツアー

早5周年を迎えようとしている「三国志フェス」が、今年も開催されます。 http://3fes.sangokushi-forum.com/2015/ てゆうかもうあと1週間後に迫ってきました! 日時は1/31(土)10:30〜、会場は同じく横浜産業ホール「マリネリア」。 前回は展示場の半面だけ…

蔡邕の娘の子供の伯母

羊祜字叔子、泰山南城人也。……祜、蔡邕外孫、景獻皇后同産弟。 ――『晋書』羊祜伝景獻羊皇后諱徽瑜、泰山南城人。……后母陳留蔡氏、漢左中郎將邕之女也。 ――『晋書』景獻羊皇后伝 ご存知の通り、羊祜と羊皇后の母親は蔡邕の娘(済陽県君)なんですけど、ところ…

全国関帝廟マップを作りたい

秋くらいから、なんか関羽ブームが来てます。僕の中で。 一時期、尚書省三國志部の教団さんと一緒に日本のあっちこっちの関帝廟を調べてまくるってことをやってました。 日本で関帝を祀る所といえば、これまで哲舟さんがリストアップされていた全国関帝廟ガ…

平成26年のまとめ

今年はあんまブログ書けなかったっすねぇ、、、 来年も、どうぞよろしくお願いします。 『三国志研究』九号に、袴田郁一「『全相平話三國志』人物事典」を投稿しました。 また三国志学会 第九回 京都大会(9/13)にて、「吉川英治『三國志』における人物…

呂玲綺にまつわる略年表【暫定版】

先日の関銀屏に続き、呂布の娘であるという呂玲綺の足跡も追っていきます。 相変わらず各種メディア方面の三国志には弱いので、いろいろ教えてくださると幸せです。 2003.6 コーエーの歴史シュミレーションゲーム「三國志戦記2」が発売される。 本作…

公孫瓚の娘

最近、「さんぱず」とかの三国志ゲーで、「公孫瓚の娘」ってのを見かけます。 実際にプレイしてないんで詳しいことはわかんないんすけど、はて公孫瓚に娘がいたっけ? 攻略wikiを見ると、どうやらこうゆう設定らしいんですけど。 公孫女 公孫瓚の娘。公孫瓚…

賈南風と娘

西晋のバカ皇帝でおなじみの恵帝。 その妻で、これまた淫乱残虐でおなじみの賈皇后こと賈南風。 ふたりの間にはついに皇子が生まれず、ただ数人の女子がいたのみであり、正史たる『晋書』にも、 惠帝即位、立為皇后。生河東、臨海、始平公主、哀獻皇女。 (…

長崎聖福寺、福済寺の関帝像

昨日の記事の最後で、聖福寺、福済寺の関帝についてちょっと触れました。 そもそも長崎には、江戸時代以来有名な唐寺(中国風の寺院)が四つありました。興福寺、崇福寺、聖徳寺、福済寺の「四福寺」です。 このうち興福寺と崇福寺に関帝像があることは有名…

シーボルトが見た関羽?

関羽を求めてネットをうろついていたら、こんな画像を見つけました。 http://www.lib.pref.fukuoka.jp/hp/gallery/nippon/kg/n2-305k.html *1 まごうことなき関羽ですね… *1:末木文美士ら編『シーボルト『日本』図録』巻三(雄松堂書店、1979)より

日本最古、京都大興寺の関帝像について

*1 以前にブログに書いた京都大興寺の関帝像を、先日の三国志学会の折に見てきました。 通常は非公開なのだそうですが、NPO三国志フォーラムの清岡さんや教団さんがツアーを企画し、お寺さんとの交渉をしてくださったんで、スムーズに拝観できました。 それ…

『全相平話三國志』人物事典

去年のお正月、『三国志平話』に登場する全人物の紹介を書きました。 http://d.hatena.ne.jp/AkaNisin+z-s-h/ それがひょんなことから、今年の『三国志研究』九号に載してもらうことになりました。 袴田郁一「『全相平話三國志』人物事典」ってやつです。 し…

関羽の末裔その1 【関永傑】

関羽の子孫といえば日本では一般に、蜀漢滅亡のときに龐会によって滅ぼされたとされています。 しかし― 關永傑、字人孟、鞏昌衞人。世官百戸。永傑好讀書、每遇忠義事、輒書之壁。狀貌奇偉、類世人所繪壯繆侯像。崇禎四年會試入都、與儕輩遊壯繆祠。有道士前…

張飛廟の馬斉

こないだツイッターって知ったネタです。 ・魂太郎三国志遺跡の1人旅 現在でも中国には各地に張飛の廟が残っているらしく、こちらの方はそのうち閬中の張飛廟に行かれたとのこと。 で、関帝廟に関平と周倉がいるように、張飛廟にも従臣がいたそうなのですが…

關聖帝君の䖝袍

旧暦6月24日は全世界的に――...異説もありますけど、関羽の誕生日です。 玄紱看其人、身長九尺、髯長二尺、面如重棗、脣若塗脂、丹鳳眼、臥蠶眉、相貌堂堂、威風凜凜。玄紱就邀他同坐、叩其姓名。其人曰、吾姓關、名羽、字壽長、後改雲長、河東解良人也。 …

宮城谷昌光『三国志読本』への批判 「新しい三国志」について

先週、宮城谷昌光の『三国志読本』をめぐって、ツイッターでもろもろの意見が飛び交いました。ひろおさんから始まり、僕が食いついたことで広まった話の様子は、ひろおさんの方でまとめられております。 http://3guozhi.jp/l/tn.html その中で、議論が飛び火…

『建康実録』と乾隆帝と関公

「関忠義」という三字は忠義将軍関羽ということなんだろうか。初めて聞く。 #建康実録— 六合 (@Rieg__Goh) 2014, 5月 19 これ見て(゚д゚)ハッとなりました。 どう見ても、乾隆帝のせいだと。 『清史稿』卷八十四 禮志三 關聖帝君にこんな一条があります。 乾隆三…

王甫と関羽

去年『吉川三国志』人物事典を作ったとき、えらい驚いたこと。 この人、王甫の話です。 王甫といえば、 ・関羽配下として樊城の戦いに従い、 ・呂蒙の策で荊州が陥落すると周倉と共に麦城に籠城し、 ・関羽が討死したため城壁から身を投げて自害した と、い…

曹植と神仙たち

僕は、曹植は神仙的要素には否定的だったとイメージしてました。 裴松之注に引かれる曹植『辯道論』に、こんな文章があるからです。 東阿王作辯道論曰、世有方士、吾王悉所招致、甘陵有甘始、廬江有左慈、陽城有郤儉。始能行氣導引、慈曉房中之術、儉善辟穀…

趙雲の嫁なんているはずがない

ただの思いつきなんで、適当なこと書いてたらすみません。 趙雲って、びっくりするほど女性関係のイメージがない人物じゃないですか。 もちろん趙雲には趙統趙廣という息子がいますから、当然夫人だっていたはずです。当たり前です。 でもググってみると、た…

関平の息子 【関樾】

数か月前から、ずっと気になってた記事がありました。 また、清代の『江陵県志』によると、関平は趙雲の娘趙氏を娶ったという。 関平と趙氏の子は関樾(木偏に越)という名で、江陵に住んでいたとある。(趙氏,關平之妻,清《江陵縣志》載關平娶鎭東将軍趙…

関銀屏にまつわる略年表【暫定版】

情報提供お願いします! 1986.8 湖北省群衆芸術館が『三国外伝』を出版。 民間に伝わる三国志説話を収集したもので、雲南省曲靖県澄江で採録したという関三小姐説話も収録された。1990.8 上記の『三国外伝』を翻訳した、立間祥介ら訳『三国志外…

「現代三国志」の女性たち  −三国志大戦3を中心に

ふと思うところがあって、「三国志大戦3」に登場した女性人物を調べました。 やたらマイナーな人物が多かったとプレイ当時も感じていたのですが、改めて調べてみると気になる傾向が見えてきました。 以下は、三国志大戦シリーズでの登場順に並べて一覧にし…

羅貫中の呪い

羅子撰水滸、而三世生唖児、紫媛著源語、而一旦堕悪趣者、蓋爲業所偪耳。 羅貫中は『水滸伝』を書いて、そのために子孫三代口のきけない子が生まれ、紫式部は『源氏物語』をあらわして、そのために一度は地獄に墜ちたというが、それはおそらく自業自得という…

張飛の蛇矛

前半は、上原究一さんの論文「丈八蛇矛の曲がりばな ―張飛像形成過程続考―」(『三国志研究』七、2012)に依っています。後半の日本の話は袴田の独自調査です。 張飛の蛇矛についてはネットだとずいぶん違ったことが書かれているので、自分の知っている…

『通俗三国志』の回題に見る三国志観

別の用事で『通俗三国志』の目次をぼーっと見てたところ、ちょっと面白いことを知りました。 三国与太噺 ‐『通俗三国志』目次(付李卓吾本) いわずもがな、『通俗三国志』は李卓吾本『三国志演義』を底本として翻訳したものですから、当然ながら目次の回題…

前漢の六代目皇帝はだれ?

名古屋大学入試の世界史で出題ミスがあったとのニュースになってます。 記事によれば以下の通り。ウワサによると「第六代皇帝の○○は〜」みたいな穴埋め形式だったらしいです。 名古屋大が2月25日に実施した入学試験(前期日程)の世界史で出題ミスがあっ…

曹丕と道教文献

搜神記曰、……漢世西域舊獻此布、中間久絶、至魏初、時人疑其無有。文帝以為火性酷烈、無含生之氣、著之典論、明其不然之事、絶智者之聽。及明帝立、詔三公曰、先帝昔著典論、不朽之格言、其刊石於廟門之外及太學、與石經並、以永示來世。至是西域使至而獻火…

京都大興寺、日本最古の関帝像か

はじめて知りました。 京都の大興寺というところに、足利尊氏が取り寄せたという関帝像があるらしいですよ。 日本最古、かもしれないとのことです。 http://www.asahi.com/and_M/information/gallery/20130329syaji/07.html http://www.zekkeikana.com/kyoto…

毛宗崗本における貂蝉の最期

同時代の語り物に比べて、『三国志演義』は貂蝉をきわめて高く評価しています。とくに毛宗崗本『演義』はその傾向が強く、以下のように貂蝉を麒麟閣・雲台(漢の功臣)に匹敵しうる英雄と位置づけています。このことは多くの先行研究で検討されてきました*1…