三国与太噺 season3

『三国志演義』や、吉川英治『三国志』や、日本の関帝廟なんかに興味があります。

第2回 「より深く理解するための「三国志」講座」

工学院大学孔子学院開講講座

――より深く理解するための「三国志」講座

第二回「孫呉を支えた四人の名将・名参謀―周瑜魯粛呂蒙陸遜―」

吉永 壮介(慶應義塾大学助教

吉永壮介(よしなが そうすけ):1973年生。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位修得修了。現在、慶應義塾大学助教。共著に『中国語で巡る「漢詩」と「三国志」の旅』(朝日出版社)のほか、「サブカルチャーとしての三国志」(勉誠出版社『アジア遊学』№97)など。

今週も行ってきましたよ工学院大学さん。
今回は呉でも人気な荊州四名将!ということか前回に比べて若い方も多かったです。でもまだまだ学生さんはあんましいらっしゃいませんねぇ。せっかく専門家の先生方のお話を聞けるのですから、もっと来ればいいのに大学生。受講料もお手軽ですし。
ちなみに今回の吉永先生、主宰の平井先生と同じく慶應で立間先生に習った間柄だそうですが、そうですよ"慶応義塾大学大学院文学研究科博士課程"と言ったらこちらの御方ではないですか。今日まで気がつかなかったなぁ。
今日は講習に続き、その後のお食事までご一緒させていただきまして、本当に楽しかったです。
次回は11月の5日、大東文化の田中靖彦先生による「『三国志』は中国でいかに語られてきたか」だそうです。『演義』に至るまでの三国志説話とか詩の話でしょうか?あるいは現代中国における三国志受容なんて話にもなったりするんでしょうか??
いやぁ首が長くなるな。




蛇足に今日のノートから感想まとめです。

1.はじめに
・長江\でけぇ/
正閏論
・「閏」は余りものの王朝
陳寿三国志』は魏を正統
・習鑿歯『漢晋春秋』は蜀を正統
司馬光資治通鑑』は魏を正統
朱熹資治通鑑綱目』は蜀を正統
→統一王朝は魏を正統とみる
→地方王朝は蜀を正統とみる

先々々週の授業で聴いたんですけど、正統、閏統のさらに下に「無統」というのがあるらしいですby『孟子

ぼくの大好きなパロ本『続後漢書』は宋末元初に、元の人郝経によって書かれています


2.周瑜
・親族から二人も三公を出した揚州きっての名士
・郡太守を三年もやれば一族郎党が一生困らないレベルの賄賂が手に入るとか
・美しかった周瑜。見た目も政治力の世界
周瑜孫策の母に拝礼したことに注目
周瑜は独力の人。天下二分。劉備の力をアテにしない
・なぜ名士の周瑜が無名の孫家に仕えたのか?
→渡邉義浩『名士』「郷里における規制力を維持するためにも、武力を持つ孫氏と結合するには有利なことであろう」
・後世における文学上の周瑜
→杜牧「赤壁」や蘇軾「念奴橋、赤壁懐古」。李牧の詩から当時すでに曹操南征の目的にひとつが小橋であったという話が定着していた

この杜牧の詩を『演義』毛宗崗が、孔明周瑜を焚きつける場面の評で引いていましたよね

杜牧は『孫子』に注をつけて、魏武注を批判していたよーな

・『平話』『演義』ともに孔明の引き立て役として道化を演じさせられている

としますと、『反三国志』のような英雄周瑜像は当時にあっては斬新だったのでしょうか



3.魯肅
・父を失い祖母と暮らした。有効な後ろ盾がなかったか
・魯肅の戯画化
(1)単刀会
→理を尽くして関羽を論破(『三国志』)
武装する呉側に対して、身一つで赴く関羽の豪胆さ。魯肅の無礼を一括(『平話』)
→伏兵で関羽を討とうとするも、関羽の剣幕に恐れをなす魯肅(雑劇「単刀会」)
→暗殺を謀るも、関羽に川岸まで引きずられ生きた心地がしない魯肅(『演義』)
(2)龐統をめぐって
→龐統の才を見抜けず免官してしまう劉備に対して、その才を説いてアドバイスする(『三国志』)
→龐統を「鳳雛」だと見抜けず丹陽令に任じてしまう(雑劇「龐掠四郡」)


4.呂蒙
呂蒙伝に「虎穴を探らずんば、いずくんぞ虎児を得ん」ってあるんですね。初めて知りましたが、出典は『後漢書』班超伝の方でよいのですよね
呂蒙と魯肅の出会いは、魯肅と周瑜のそれに比べて対称的。魯肅は能動的に呂蒙を訪ねてはいない
・異色多彩な呉において、人物間の繋がりはかなり感情的な要素が強い
周瑜、魯肅ともに、自分と意見を異とする者を後任に推薦している


5.陸遜
・かつて陸康に軽んじられていた孫策
孫策は陸康の廬江において苛烈な処分をしたが、それに対して廬江出身の周瑜がギリギリのところで名士との軋轢を抑えた
・呉政権の地域を、山越が多い辺境と見るか、貴族社会化の基盤があった先進地域と見るか、分かれるところ
荊州牧時代、孫権が蜀に発する書簡を最終チェックする権限を与えられていた陸遜
・『演義』においてネガキャンされていない珍しい呉の司令官
孔明との直接接点が少ない
→蜀との同盟期間に活躍した