週刊『反三国志演義』、第二回
☆第二回 江東に闘って孫権が以前の仇に報い
荊州を譲って劉表が後々の患を憂う
※文庫版59ページ〜97ページ
○あらすじ
文武の名将が揃った劉備陣営、いよいよ今後の方策が諸葛亮によって掲げられる。天下三分の計である。劉備これを良しとし、こうして劉備陣営は新野に拠ってますます盛んとなった。
孫権は江夏を狙うこと久しかったが、大将の劉蒅が荊州に異動したとの知らせを聞くや、その隙に乗じて、徐盛を大将に、甘寧を先鋒に任じて直ちにこれを攻めさせた。甘寧の活躍により黄祖らは討ち取られ、孫権はたちまちのうちに江夏城を手に入れてしまった。
さて少し時間を戻し、こちらは荊州の劉表。病臥の劉表は自分の老い先が長くない事を悟って、劉備に荊州を譲り渡す事を決意する。劉表は密かに伊籍を派遣して劉備を呼び寄せんとする。
一方で蔡夫人もまた劉表の余命を悟り、劉蒴を後継者に据えんと策謀を巡らせる。そこで蒯越の進言に従い、偽って劉蒅を呼び寄せる。それによって孫呉の侵攻を許してしまったのは前述の通りであるが、蔡氏らはその罪をも劉蒅に擦り付け、これを処刑しようとする。
あわや絶体絶命の劉蒅。と、そこへ劉備が駆け付け、事態を仲介する。劉表は待ち望んだ劉備の到着を喜び、瀕死の身体で劉備に懇願。劉備はとうとう断り切れず、荊州牧の印綬を受け取る。こうして天下は、中原に曹操、荊州に劉備、江東に孫権という鼎立の状態となったのである。
○主な登場人物
・魏延
巴陵で賊をしていた。新野に赴く道中の黄忠を襲撃、かえって屈伏させられて共に劉備陣営に加わる。一連の挿話は『演義』における関羽と周倉の出会いに似ている。また『演義』における襄陽城での一暴れはカット。
・劉表
『演義』では劉備に荊州を譲ろうとするも最期の最期まで劉備が断り続けたために果たせず、蔡瑁らの専横を許す。本作では「天下を治める力はないが、大義をわきまえる人」などと高く評価され、見事劉備に荊州を譲り渡した。
・蔡氏
劉表の後妻。本作では典型的悪女として徹底して貶められる。
・徐盛
江夏攻めの総大将。本作での徐盛は孫呉陣営の中心として活躍する。
・天下三分の計(p62)
今後の方策を問われた諸葛亮は、近い将来に荊州に乱が起こる事を予言し、それに乗じて荊州を確保、しかる後に荊南、益州を奪取してこれらを拠点として中原に討って出るべし、と進言。いわゆる天下三分計と特別に変わりはないが、ただ孫呉に関する言及が特にない。
・劉蒅と劉蒴(p73)
「豚か犬くらいの才能」と父劉表に評されているが、これは『三国志』孫権伝注引『呉歴』にある曹操の言葉「子を生むは当に孫仲謀の如くすべし、劉景升の児子は豚犬のごときのみ」に由来する。『演義』六十一回にも見られる。
・鸚鵡洲(p88)
禰衡の最期は『演義』二十三回に拠っており、禰衡が葬られたという鸚鵡洲もこの箇所にある。
○感想
『演義』では果たせなかった劉表の荊州譲渡。それが成功するifがこの第二回になります。早々に劉備が荊州を固めた事で、今後の展開が大きく変化します。また劉蒴や蔡瑁といった、『演義』では早々に退場してしまう荊州勢が今後もまた登場したりしますね。
また僕が印象的だったのは黄祖攻めで、呂公や張武といった本来は登場しないキャラクターが顔を見せてるんですね。荊州オールスターズって感じです。黄祖が禰衡の墓で最期を迎えるのも面白い演出だと思います。本作はどうやら「因果応報」を思わせる描写が多く感じますねー。