三国与太噺 season3

『三国志演義』や、吉川英治『三国志』や、日本の関帝廟なんかに興味があります。

「レッドクリフ partⅠ」を実況せんとす

(04.05)オープニングで映る宝剣。副音声で井戸田さんが「これ劉備が母親から貰った伝家の宝剣かと思った」と言ってます。先生が「それはマンガのことで演義にはないので、中国にはない話なので無理であります」と答え、「演義にはないんですか」と驚く井戸田さん。劉家の宝剣、あるいはそれを托した劉備の母親、どっちも吉川三国志のオリジナルですけど、日本の三国志だとだいたいどっちかは出てきますもんね。吉川の影響力恐るべしです。

(10.00)自由を奪われた帝と、諫言して処刑される忠臣。誰が悪者か一目でわかっていいですね。この曹操は―演じるのは張豊毅という俳優だそうですが、酷薄そうでかつ強そうな曹操で、これもとてもいいです。ドラマ「三国志TK」の愛嬌ある曹操(演:陳建斌)とはまた違った奸雄曹操です。

(11.36)ちらっと映る張飛の全身。得物は蛇矛じゃないんですねぇ。

(15.33)この小太りの劉備側近。劇中一度も名前が明かされないんですけど、そのくせたびたび劉備軍のすみっこに登場し、partⅡの最終局面にも顔を見せるってゆう謎の武将。エンドロールを見た感じ、どうも関平(演:孟和烏力吉)じゃないかと思うんですけど。

(16.19)どさくさのうちに死ぬ甘夫人。

(19.38)やはり糜夫人の自害は長坂坡の戦いでは外せないですね。このあと登場する驪姫(曹操の妾)との対比にもなってます。

(22.30)趙雲張飛とで戦いぶりが全然違うのがいいですね。流れるように次々倒していく趙雲と、何人もまとめて吹き飛ばす張飛

(23.05)関羽のエントリーだ!

(23.54)敵兵を一掃し、見得を切る関羽!間違いなくpartⅠで一番の見せ場でしょうね!
 レッドクリフの登場人物で、こうして敵を倒すたびに見得を切るのは関羽だけ。これは京劇の所作を参考にしているらしいです。本作の関羽はあくまで脇役のひとりですけど、それでも少ない出番の中でこうしてきっちり特別扱いされてるのが流石です。
 それに関羽役の巴森扎布がもうすごく関羽っぽい関羽です。モンゴル族の出身で、チンギス・ハンの末裔なのだとか。最近見た他の関羽に比べると―ドラマ「三国志TK」(演:于栄光)と映画「三国志英傑伝 関羽」(演:ドニー・イェン)ですけど、その中では申し訳ないけどレッドクリフ関羽が圧倒的にいいです。

(29.49)敵中にとり残される関羽。しかし曹操に降らない関羽関羽が去るのを見逃す曹操曹操を殺さない関羽。『演義』の「関公三約」と「千里行」と「義釈華容道」をモチーフにしたレッドクリフオリジナルの場面です。やはり関羽は別格です。

(33.07)字がへたくそな蔡瑁将軍。荊州を代表する士大夫なんだが…

(36.07)このいかにも平田広明さんみたいな声で喋りそうな孫権がまたカッコよくて好きです。

(43.43)「曲に誤りあらば周郎が顧みる」ですね!多くは語らず、「音楽と言えば周瑜だ」という記号でキャラクターを説明できちゃうところに、向こうの三国志知識の高さを感じます。日本のドラマで赤い甲冑が出てきたら幸村だ!って日本人がすぐわかるみたいに。

(51.52)このエピソードの元ネタは、たぶん絶纓の会の故事じゃないかな。『演義』で李儒が話していたやつ。副音声でもそうだと言ってたのできっとそうです。

(52.19)「頂いた倉庫半分の残りも頂かなくては」と周瑜。こういう台詞がさらっと出てきても向こうの一般の人は意味がわかっちゃうんですかね。

(52.37)すわ小喬に子供がとここで肩透かしさせておいて、後になって実は本当に…というズルい演出。

(54.43)なんでここで諸葛亮が馬のお産を手伝うのか、ちょっと謎です。もちろん諸葛亮周瑜小喬の信用を得るためのイベントなのですけど、それが馬のお産である理由はなんでしょう。副音声では、諸葛亮と医術はよく結び付けられるって説明されてました。僕はそれに加えてもうひとつ、諸葛亮には隆中時代に農家やってたってイメージがあるからじゃないかなって思います。劇中でも、周瑜に心得を問われた諸葛亮が「牛のお産を手伝ったことならあります」と自分の経験から答えてますよね。ここであえて牛というワードを出してることも、農業を連想させます。
 ただまあ、家族愛とか生命愛ってゆう作品テーマを象徴させてるだけで、三国志的にはあまり意味がないのかもですが…。

(61.00)医術だけでなく音楽にも通じる諸葛亮諸葛亮が書いたとされる『琴経』という本があるらしいです。『吉川三国志』がそう言ってました。

(62.20)ゲスト出演する華佗。さすが有名人です。

(63.36)ここで蔡瑁が天候の話をしてるのは後の伏線ですが、それが回収されるのはなんとpartⅡの終盤。忘れる。

(76.53)孫権が決断するまでの流れがすごくよかったです!
 ①諸葛亮孫権に同盟を求める⇒②諸葛亮周瑜を説得する⇒③周瑜孫権を決断させるという流れ自体は『演義』と同じですけど、キャラの振る舞いやスポットの当て方を変えることで、この作品が『演義』とはテーマが違うってことをはっきり表現してました。
 演義では、諸葛亮が呉臣を論破したり孫権を挑発したり(①)、曹操小喬を狙っていることを利用して周瑜を怒らせる(②)など、諸葛亮の智絶ぶりを描くことがこの場面のメインテーマでした。対してレッドクリフで強調されていたのは諸葛亮の誠意と友情です。孫権の真情を汲み(①)、周瑜にはあえて説得せずその心を確かめるに留めていた(②)ように。そのため、演義のような知力の高さはここでは鳴りを潜めます。また、『演義』に比べて圧倒的に③に尺を使ってたのも印象的です。兄として孫権の決断を導こうとする周瑜の姿は、本作のテーマのひとつである家族愛の表現なんでしょうね。

(77.49)この真似字も伏線。

(80.44)兵士を訓練する趙雲、子供に学問を教える関羽、書をする張飛、草鞋を編む劉備井戸田さんが言ってる通り、劉備陣営のキャラクターをわかりやすく紹介して楽しいです。
 関羽が教えてるのは『詩経』です。関羽と言えば『左伝』ですけど、『左伝』は子供がもっと大きくなってから勉強するものですから、ここでは『詩経』なんでしょう。
 張飛が書道に達者というのはすごく意外です。中国ではポピュラーな張飛像なんでしょうか?ちょっと元ネタが思い当たらないです。ただ、張飛はああゆう愛されキャラなので、そのギャップを題材にした伝承はたくさんあります。曹操諸葛亮を知恵で負かすとか。張飛が意外な一面を見せることは意外じゃないのです。

(82.27)金城孔明が時折見せるお茶目で飄々としたしぐさがたまんないです。

(94.51)本作では端役も端役ですけど張遼が登場。冒頭の曹操関羽を見逃すシーンにいないかなと探しましたが、見つけられませんでした。partⅡでもちょいちょい顔見せしてるっぽいですが、とくに重要な役割はなし。残念です。

(94.55)謎のオリジナルキャラクター魏賁が登場。

(96.30)夏侯雋夏侯惇夏侯淵をモデルにする架空の人物だそうですが、しかし夏侯って姓がいいですね。三国志の物語において、やられ役を輩出することにかけては夏侯氏の右に出る家はありません。名門です。夏侯氏が出てきたら、だいたいそいつはかませ犬と考えてよろしい。partⅠのクライマックスを飾るにうってつけの人選です。

(107.18)好!!

(108.26)張飛の大吶喊。とにかく力任せな戦い方が張飛らしいです。冒頭で関羽が騎兵を体当たりで倒してましたけど(23.54)、ここでの張飛は騎兵ふたりをまとめて吹っ飛ばしてます。張飛のほうが強い!

(109.19)満を持して二丁拳銃が登場!ここで趙雲が使ってる剣のうち1本はきっと青詇ですね。もう1本のと比べて明らかに綺麗だから。

(115.35)謎のオリジナルキャラクター魏賁が討死。史実の赤壁の戦いでは名のある将軍は誰も死なないから、死に役としてこういう架空の人物が用意されたんでしょう。夏侯雋、そして甘興もおそらく。

(117.22)ここで甘興の踏み台になってるのが例の牛泥棒三人組です。

(126.36)「徳のある者だけがこれを治める」と孫権。『演義』では単刀会で周倉魯粛を一喝したときの台詞です。

(126.54)「でしょ?」とお茶目な吹き替え平田さん。

(127.57)荊州問題に孫尚香の婚姻話。それに物憂げな顔をする諸葛亮魯粛。視聴者がレッドクリフ後の三国志の展開を当然知ってる前提で話が進みます。

(129.37)満を持して白い鳩が登場!

(130.53)井戸田さんかわいそう。

(139.11)曹操のおじいちゃんが蹴鞠やってたんじゃないですっけ」と井戸田さん。きっと『蒼天航路』を読まれたんですね。