『通俗続三国志』卷三 あらすじ
明代、酉陽野史によって成立した『三国志後伝』は、『三国志演義』の後を継いで、西晋末から東晋初までの動乱期を描いた章回小説です。
そして江戸時代、これを翻訳した通俗小説『通俗続三国志』と『通俗続後三国志』がありました。
こちらではその『三国志演義』の続編を、第一巻よりあらすじでまとめてみたいと思います。
第三巻は、劉淵・齊万年と羌胡の将帥郝元度の合流、武帝司馬炎の崩御、張賓らの動向、といった内容になっています。
☆巻之三、収録タイトル
・漢客が各々騎射の法を演ず
・齊万年が鎖川に虎を打つ
・晋の武帝が孤を楊駿に托す
・賈后が肆意にして荒淫す
・張賓が劫かせられ元達を訪ねる
☆『後伝』
第十回 「萬年鎖川海打虎」
第十一回「武帝托孤於楊駿」
第十二回「張賓被刧訪元達」
に相当する
・漢客が各々騎射の法を演ず
翌日、漢臣たちの武勇を見込んだ郝元度はそれぞれの武技を披露するよう求める。
そこで蜀漢随一の名将、齊万年が月氏の駿馬に跨って六十斤の大刀を舞わせば、まさしく飛ぶが如く、一道の雷光の如くであったので胡兵に驚嘆しない者はなかった。そして胡族の硬弓をめいっぱい引けば、なんとこれを引き折ってしまった。郝元度が命じて更に貸し与えれば、それもまた折ってしまう。郝元度は生半可な弓を用意した部下を叱責したが、見ればいずれも間違いなく天下の名弓。そこで馬蘭が進み出て一張の鉄胎弓を差し出せば、これぞ鎮西将軍馬超より伝わる神弓である。
齊万年は喜び、さっそく馬を駆らせれば、一連六箭すべてが的中、更に振り向きざまに三箭、やはりこれも的中であったので、郝元度以下諸将は皆なその妙技に感服した。
・齊万年が鎖川に虎を打つ
と、そこへ突如一匹の猛虎が現れた。思わぬ猛獣の出現に胡兵たちは恐慌し、郝元度、馬蘭らと言えども皆な恐れ惑うばかり。諸将が慌ててこれを射ろうとしたところ、齊万年は躍り出て郝元度を守護して言う。これ如きの小畜生は私が打ち倒して、素晴らしい毛皮を献上してみせんと。
そして虎に向き合ってこれに大喝すれば、虎は猛け狂って齊万年へと飛びかかる。齊万年は身を翻してこれを躱わし、すかさず力任せに脇腹を拳で打ち据える。たまらず転倒する虎に、更に万年は一撃一撃と殴りつければ遂に頭骨が砕け、虎は動かなくなった。万年はそれを難なく担ぎあげて郝元度に差し出したので、諸将はそろって驚嘆し、神力天威、まさしく孟賁や夏育にも劣るまいと讃えた。
・晋の武帝が孤を楊駿に托す
咸寧五年、武帝は後継者の問題で頭を悩ませていた。太子の司馬衷は昏庸で帝位に堪えられるとは思えず、また太子妃賈南風が大変に残忍な性格であったためである。
しかしこれに対し楊皇后は嫡長を以て後継とすることを説き、また皇孫である司馬遹が聡明であること、南風の父の功績を挙げて諌める。楊駿、荀勗らもこれを支持したので結局武帝は衷を太子と定めた。衛瓘や和嶠ら心ある朝臣はこれを憂う。
諸王の封建、皇帝の驕奢、太子の不慧、外戚の専横、未だ朝廷が安定しない中で、武帝は病に倒れる。武帝は司馬亮と楊駿に自らの跡を委ねると、晋朝の行く末を憂いたまま崩御した。楊駿は、司馬衷を帝位に即かせ、賈南風を皇后とし、自らを大傅とした。晋王朝を滅ぼす恵帝時代のはじまりである。
そして共に輔政を委ねられた楊駿と司馬亮であったが、早くも反目し合い、命の危機を悟った司馬亮はいち早く京師を脱する。
恵帝の暗愚に乗じ、楊駿と、そして賈皇后は共に権力を欲しいままにした。
・賈后が肆意にして荒淫す
洛陽都尉の小官吏の何某は、容姿美麗な青年であったが、ある日より高価な衣服を身につけるようになった。同僚はこれを怪しみ、さてはどこぞより盗んだものかと噂した。
噂を聞きつけた都尉は直ちに小吏を捕え、尋問すると、事極まった小吏は白状して、これは盗んだものではない、夢のような話だが、ある晩に老婆に誘われるままについて行くと、見た事もないような豪奢な屋敷へ案内され、そこで毎晩とある夫人の相手をさせられたのだ、この美服はその礼に賜ったものである、と言った。
都尉は驚き、その夫人の容貌を問えば、身の丈短矮にして色は青白かったと言うので、都尉はこれが皇后賈南風であることを悟る。醜聞が広まることを恐れた都尉は、何も分からぬままの小吏にきつく戒め、また証拠の美服も密かに隠したものの、甲斐なくやがて洛陽は賈后の醜聲で持ちきりとなった。
・張賓が劫かせられ元達を訪ねる
成都を脱出して以来、流浪を繰り返す張賓兄弟、趙染兄弟、汲桑ら一行。その道中に山賊の一団に襲われる。名将の遺児たちは多勢相手に奮戦し、なんとか賊を退ける。が、なんと逃げる山賊らがそのどさくさの中で幼い趙勒を攫ってしまう。この趙勒とは趙雲の孫にして趙染らの末弟である。はっと気付いた汲桑は、慌てて独りこれを追う。
野盗により持ち物を失い、また汲桑ともはぐれて彷徨う張賓一行は、地元の名士、陳元達に助けを求める。陳元達は張賓らを快く迎え、すぐさま山賊に奪われた荷物を取り返した。しかし汲桑らの行方は依然として分からなかった。
陳元達に厚く謝辞を述べ、去らんとした張賓だったが、陳元達はこれを只者ではないと見抜き、語らい合うに両者は意気投合し、これより深く相結ぶ。