三国与太噺 season3

『三国志演義』や、吉川英治『三国志』や、日本の関帝廟なんかに興味があります。

2013-01-01から1年間の記事一覧

平成24年&25年のまとめ

矢のようにけたたましく過ぎていった二年間でした。 新潮社より、吉川英治『三国志』が新装版で好評刊行中 同じく新潮社文庫より、『吉川三国志』を踏まえた渡邉義浩『三国志ナビ』が発売。第二章 「三国志」人物伝の作成を担当。『吉川三国志』に準拠した人…

諸葛菜と孔明菜

先日のBSプレミアム「ザ・プロファイラー」という番組にて諸葛亮が特集されていましたが、ご覧になられたでしょうか? 監修・解説はおなじみ渡邉義浩先生でしたが、個人的にはVTRで渡辺精一先生が出演されていたことにびっくりしました。二松でお世話になっ…

新興郡劉氏は陳留蔡氏や泰山羊氏と婚姻を重ねる名門です

しかも晋の帝室司馬氏とも間接的な姻戚関係にあります。

蔡邕の娘

西晋の名将羊祜と司馬師の皇后羊氏の姉弟が、かの蔡邕の外孫であることは有名です。 ただ、右図を見ての通り、羊姉弟と蔡邕では生没年がずいぶんと離れてますよね。蔡氏が蔡邕最晩年の娘だったとしても、30年は離れすぎです。蔡氏はわりかし高齢の出産だっ…

『後漢書』荀悦伝の偏向

絓字仲豫、儉之子也。儉早卒。絓年十二、能說春秋。家貧無書、毎之人輭、所見篇牘、一覽多能誦記。性沈靜、美姿容、尤好著述。靈帝時閹官用權、士多退身窮處、絓乃託疾隱居、時人莫之識、雖從弟紣特稱敬焉。初辟鎮東將軍曹操府、遷黄門侍郎。獻帝頗好文學、…

献帝曹皇后は誰か

「列女志補説」‐献帝の皇后の名は 「献帝曹皇后といえば普通は曹節だとされるが、実はその姉のほうだったかもしれない。」 詳しくはリンク先で確認していただきたいと思いますが、僕は思い込みの隙を突かれたようで、すごく驚きました。 ただ考察され尽くし…

蹋頓の読み方

遼西單于蹋頓尤彊、為紹所厚、故尚兄弟歸之、數入塞為害。 ―『三国志』巻一 武帝紀 建安十一年 前々からこの「蹋頓」の読み方がわからなかったんです。 wikipediaでは「トウトン」 『蒼天航路』では「トウトツ」 『秘本三国志』も「トウトン」 三国志大戦で…

魏の荀紣か漢の荀紣か

荀紣について、以前から気になっていた表現がありました。 荀邈字景倩、潁川人、魏太尉紣之第六子也。 ―唐修『晋書』巻三十九 荀邈伝 荀粔字景猷、潁川臨潁人、魏太尉紣之玄孫也。 ―唐修『晋書』巻七十五 荀粔伝 建安年間に死没したはずの荀紣が「魏の太尉」…

本姓夏侯氏

DNA解析の結果、曹氏と夏侯氏の間に遺伝的一致はなかった、すなわち曹嵩は夏侯氏から養子に入ったのではなく、曹氏傍系の出身だったのだ。 そんな中国の研究が三国志界隈を震撼させています。 曹操出自の謎に完全決着というセンセーショナルなニュースは…

毛宗崗本における華佗の最期

以下は立間祥介訳『三国志演義』第七十八回の一段落である。 頭痛に悩まされる曹操は、神医と称される華佗を辟紹して治療にあたらせる。以下を読んで問いに答えよ。 華佗の言うには、 「大王(曹操)の頭痛は風がもとで起こったものでございます。病根が頭の中…

『捜神記』の居場所

『三国志』裴注でもよく見る干宝『捜神記』は、唐修の『隋書』経籍志では史部の雑伝に分類されています。他では劉向『列女伝』や習鑿齒『襄陽記』や慧皎『高僧伝』などなどが載せられている部分です。 『旧唐書』経籍志でも同じく史部にありましたが、これが…

『漢晋春秋』の蜀漢正統論

中村圭爾先生の「魏蜀正閏論の一側面」(『六朝政治社会史研究』(汲古書院、2013)収録)を読んだ感想であります。 習鑿歯『漢晋春秋』の蜀漢正統論は、『四庫提要』が言うように蜀漢と同様に亡命政権を建てた東晋の正統性を主張するため、と解釈されて…

楊駿と楊彪の関係

常識だったらすんません*1。 楊駿、字は文長。弘農華陰の人なり。 ―『晋書』楊駿伝 武悼楊皇后、諱は芷、字は季蘭、小字男胤。元后の從妹なり。父の駿、別に傳有り。 ―『晋書』武悼楊皇后伝 楊文宗、武元皇后の父なり。其の先 漢に事(つか)へ、四世 三公と…

関羽の郵便屋さん

「わたくしは姓を胡、名を華と申します。いま息子の胡班と申すのが、滎陽太守の王植殿のもとで従事をいたしておりますが、将軍がもしあのあたりをお通りになるようでしたら、息子に手紙をことづかっていただけないでしょうか?」 ―『三国志演義』第二十七回…

魏の"呂通"なる人

水軍の中央は黄旗の毛玠と于禁、前軍に紅旗の張郃、後軍に黒旗の呂虔、左軍に青旗の文聘、右軍に白旗の呂通を配した。陸上の前軍には紅旗の徐晃、後軍に黒旗の李典、左軍に青旗の楽進、右軍に白旗の夏侯淵である。水陸路の接應使には夏侯惇と曹洪、護衛往来…

關帝信仰における周倉のはじまり

1909年、西夏国の遺跡カラホト(黒城)が発見された際に出土したという、金代の関羽画であります。『三国志演義』や『三国志平話』よりも古い、現存最古の関羽像と言われています。しかしながら関羽の鬚や青龍刀という、現在の関羽像に通じるアイテムが…

匈奴の仏像と三国時代の仏教

其の明年春、漢は驃騎將軍去病をして萬騎を將ゐ隴西に出でさしむ。焉支山を過り千餘里、匈奴を擊ち、胡の首虜萬八千餘級を得、破りて休屠王の天を祭るの金人を得る。 ―『史記』匈奴伝 去病の侯たること三歲、元狩二年春、票騎將軍と為り、萬騎を將ゐ隴西に出…

范曄『後漢書』と「党錮伝」

以前にひろおさんに教えていただいた話を、改めて自分用にまとめました。 尹勳、字伯元、河南鞏人也。家世衣冠。伯父睦為司徒、兄頌為太尉、宗族多居貴位者、而勳獨持清操、不以地埶尚人。州郡連辟、察孝廉、三遷邯鄲令、政有異迹。後舉高第、五遷尚書令。及…

『吉川三国志』研究、参考文献目録

学部の頃に国文学を専攻して以来、大学院で中国学をやっている今も、『吉川三国志』を読み解こうと(本来のテーマとは別に)ちょっとアプローチを続けていました。せっかくなので、今まで使ってきた参考文献の目録をアップします。 僕はもっぱら「三国志」の…

牛氏と東晋元帝にまつわる正史記事

先日の雲子さんの牛金毒殺の記事から、twitterで派生した話題に関連しまして、「東晋元帝は牛氏の出身である」という説話が正史資料でいかなる変遷をたどっていたか、資料の成立順にまとめてみました。 ○王隠『晋書』(『太平御覧』巻七六一引) 宣帝 既に公…

竹中半兵衛と今孔明

『センゴク天正記』11巻、初期からの主要人物であった竹中半兵衛が陣没するこの巻は、かかる引用で締めくくられています。 秀吉の御座す平山に行きて六月中の頃 終に失せにしそかし、秀吉限りなく悲しみ劉備孔明を失いしに劣らずという 『豊鑑』 秀吉を劉…

『吉川三国志』草莽の巻 「劉安、人を喰った話」

吉川英治が原典とした『三国志演義』(ならびに『通俗三国志』)には、以下の3か所に人を喰った話があります。 第9回、董卓誅殺後に李儒が怨みある民衆から喰い殺される場面。 第19回、徐州から逃れてきた劉備をもてなそうと、猟師劉安が自分の妻の肉を…

関羽の末裔

我われはこの男を知っている! いや!この重棗の如き顔色とこの美髯を知っている! 関龍逢 後述の『新唐書』宰相世系表にて、関氏の祖とされている。 正史を検索してみると、「関龍逢は、夏の桀王の臣である。比干は、殷の紂王の叔父である。二人はともに諫…

『吉川三国志』群星の巻 「貂蝉」

もともと貂蝉は中国の「三国志」説話の中から発生した人物であり、史料に典拠がある人ではありません。そのためか日本の「三国志」作品では、すごい色々な貂蝉が登場します。本当に千差万別です。『秘本三国志』では仏教を信仰する胡人で、『蒼天航路』では…

『吉川三国志』桃園の巻 「劉備の母」

だが、二歳から四十年まで、自分が会ったり知ったりして来た女性のうちへ、現在の周囲も入れ、お前は一体、いちばん誰に恋しているのかと問われれば、僕は真っすぐにこう答えるよりほかにしかたがない。 ――死んだおっ母さん。 吉川英治『窓辺雑草』 吉川英治…

改姓の事例

「尚書省 三國志部」‐『三国志』中の改名した人物 こちらの教団さんの記事に触発されまして、僕は「改姓した人」に絞って調べてみたいなと思いました。 教団さんの記事を見ながら、いま思いついた限りを挙げてみただけでありますので、足りない事例を教えて…

蜀郡趙氏 【成都四姓】

後漢最期の三公である趙温、董卓政権下で活躍した三公の趙謙、党錮の禁で粛清を受けた八俊の趙典、桓帝冊立に関与した三公の趙戒。 後漢後期により突如台頭した蜀郡成都県の趙氏らは、一家三代で三公級を人士を4人も輩出しました。後漢を通じて、一族から三…

『画俗三国志』

昨年秋に訪れた「時空をかける三国志」展では勉強になることがたくさんでしたが、特に蒙を啓かれたことが、この『画伝三国志』の存在であります。 『画伝三国志』 ・全十篇七十六巻 ・文政十三(1830)年〜天保六(1835)年刊行 ・書肆 江戸両国 大…

『通俗三国志』・『絵本通俗三国志』目次(付緑蔭堂本)

『通俗三国志』(元禄五刊)と『絵本通俗三国志』(天保十二刊)は、テキストはほとんど一緒なので、目次もほぼ変わりありません。 ただ前者が全50巻で後者が全75巻なので1巻ごとの収録話数が違っており、また字句にも微妙な違いがない訳ではありません…

湖南文山『通俗三国志』の初版本

【審議中】( ´・ω)(´・ω・)(´・ω・`)(・ω・`)(ω・` ) 元禄二年から五年に刊行された、湖南文山『通俗三国志』の初版本です。たぶん 300年前に生まれた、日本で最初の「三国志」であります。たぶん