三国与太噺 season3

『三国志演義』や、吉川英治『三国志』や、日本の関帝廟なんかに興味があります。

役者絵「寿帝公関羽」

 今日の授業で見学した図書館におもしろいものがあったので。

 こちらの浮世絵です。
 

 画像はこちらの早稲田さんから引っ張らせていただきました。詳細がリンク先にあるのでご覧ください。また、こちらの成田屋さんのページにも紹介がありました。

 いわゆる役者絵というものだそうで、こちらにある通り歌舞伎十八番のひとつ「関羽」を描いたものです。嘉永五(1852)年のものとあります。
 青龍刀、赤兎馬、美髯、そしてそれをしごく関羽独特の見得、と関公の特徴がしっかり描き込まれてると思います。

 気になるところは、この画題の「寿帝公関羽」というところの「寿帝公」です。
 ひとつには、これが「寿亭侯」の勘違いに基づいていることがわかります。*1
 寿亭侯の勘違いが依然正されていなかったことを窺わせる資料と言えます。

 ふたつには、その関羽爵位「ジュテイコウ」の音に、間違った漢字を当てていることです。
 正しくは上記のとおり「寿亭侯」であり、関羽の称号として「寿帝公」という間違いは初めて見ました。
 ただその誤字にしても、関聖帝君の信仰を念頭においた誤字っぽいことが窺われ、興味深いです。

*1:三国志演義』のうち古いものは、関羽爵位を誤って「寿亭侯」としていました。正しくは「漢寿亭侯」であります。この勘違いが中国で正されたのは明代ごろ。日本においては、さらに長い期間、勘違いされたままであったろうと思われ、この浮世絵が刷られた当時の『絵本通俗三国志』もまた間違いを正すことはありませんでした。