三国志フェス2011
先々週末、蒲田で行われた「三国志フェス2011」では、主催の方々、来場されたお客様、スタッフの人たち、出展・出演された皆様、、、、などなど、皆様お疲れさまでした&ありがとうございました。
夢のような一日と言うか、三国志ファンを700人くらい一箇所に集めるとこんなんになるんかという、本当にすさまじいすばらしいヒトトキでございました。
改めて、携われた全ての方に感謝申し上げたいと思います。
さて自分は今回、当日スタッフとしてお手伝いさせてもらいまして、主に「三国志コレクション展」を担当しておりました。なので、そちらのコレクション展に関していくらか書きたいと思います。
今回展示されていた物は、川本喜八郎先生の製作で個人の方が所有されていた若荀紣人形・関羽人形と、草林社さんが提供してくださった文物とがありました。*1中央のテーブル・パネル等にずらっと展示されていた物はすべて、草林社さん提供です。
展示品を見られたお客様が「呉のモノが少なーい(´・ω・`)」とかおっしゃられたそうですが(笑)、それもそうでしょうねと思います。ここに展示されていた物はほとんどが「中華民国時代〜現代に中国で製作された三国志物品」でした。なので、近現代中国でどんな三国志グッズが作られているか、ひいては"三国志"が中国でどのようなイメージを持たれて、どの様に受容されているか、ってのが見どころだったかなと思います。
それで作品全体を見ますと、やっぱり『三国志演義』を直接のモチーフとするものが、つまり蜀漢関係の品物が圧倒的に多いんですよね。一緒に展示スタッフをやってた女性も呉のファンだそうでやっぱりちょっと(´・ω・`)ショボーンとされてましたw
展示されてたレゴ(っぽいもの)まで『三国志演義』がモチーフでしたから、現代にあっても中国では"三国志"=『三国志演義』なのでしょうかね?
ところでぼくが展示品から感じたのは、中国人の『三国志演義』に対する知識の深さです。
例えばポスターやレゴ(っぽいもの)は『三国志演義』の一場面をモチーフにしたものが多かったんですけど、かなり場面チョイスが渋い…ってか。日本人からしたらかなりマニアックに感じるものが多かったかと思います。「関雲長義釈黄漢升」のシーンとか。
これらはもちろん商業品ですから、つまり一般のお客さん側にもそれだけの三国志知識が備わっていたということです。それだけ中国人にとって『三国志演義』が身近な古典作品なのでしょう。
それが一番現れていたのがこのポスターなのかなと思います。
民国時代に描かれた「煙草会社の広告ポスター」です。満田剛先生もおっしゃっていたんですけれど、この様に「三国志モチーフのイラストを自社のポスターすることで広告効果があった」ことが驚きです。今でいえばアサヒビールがポスターにグラドルの写真を載っけるのと同じでしょうか。三国志がいかに一般に好意的に受容されていたかが窺えます。
それにそのイラストの中身も面白いんです。
これは『三国志演義』中の名場面、いわゆる「関公秉燭達旦」*2でして、なのでちょっと分かりづらい写真ですけど、手前に描かれる二人の女性、これが甘夫人と麋夫人ですね。その奥の間に赤い顔の男が書を片手に座っていますが、これが『春秋』を読んでる関羽です。関羽の有名なエピソードを描きつつ、女性二人を前面に出して描くことで商業ポスターとしての華を持たせるという、非常によくできたポスターだと思います。
さらに面白いことに、これも満田先生が解説で指摘されていたことなんですけど、その関羽の更に奥、入口の辺りで部屋の中の様子を覗いている男が描かれているんです。先生が言うには、これが曹操だろうと。女好きの曹操の事ですから二人が気になって覗きに来たんでしょうけど、実はお目当てはそれだけじゃなくて、きっと関羽の方も曹操は気になるんでしょうね。女大好き、関羽大好きという曹操のキャラクターがよく出てるんですけど、実は元ネタの「関公秉燭達旦」には曹操は登場しません。だからこれは曹操のキャラクターをよく知った上での、絵師さんのアレンジなんですね。商業ポスターながら、かなり高度な三国志知識が集約されていると思います。
自分は今、卒業研究として日本における三国志受容の一部をテーマにしているんですけど、その好対照のひとつとして今回のコレクション展は個人的にも大変勉強になりました。
*1:川本先生製作の人形については、所有者様・関係者様のブログをぜひ!
・「緝郁庵ブログ」
http://gaoyangli.blog79.fc2.com/blog-entry-313.html
・「哲坊の呑む喰う浸かる、歴史に憩う」
http://blog.livedoor.jp/tetsubo8/archives/65663848.html
自分はコレクション展担当として真っ先にナマで人形を見させていただいたんで本当に光栄でした
*2:場面としては下邳で関羽が曹操に敗れた後になりますね。曹操に降伏した関羽は劉備夫人らを伴って許都に向かいますが、その道中で曹操は謀り事をして、関羽と二夫人とを同じ宿に宿泊させます。思い余った関羽に不義をさせてやろうという魂胆ですね。ところが関羽は二夫人に手を出すどころか、戸外に立って一晩中見張りを続けたのでした。"義絶"関羽の面目躍如の名場面です