三国与太噺 season3

『三国志演義』や、吉川英治『三国志』や、日本の関帝廟なんかに興味があります。

貂蝉の再登場

呂布陳宮の言を聞きても心を決めることができず、貂蝉に打ち明けた。貂蝉が曰く「将軍は私を思って、軽々しく城から出ることありませんよう」呂布曰く「憂慮することなかれ。我に画戟と赤兔馬あり、誰があえて近づけよう」……呂布はこれ以降終日出ることはなく、ただ厳氏、貂蝉と酒を飲むようになった。(『三国志演義』第十九回)





 長安を脱した後の貂蝉の、唯一の登場場面です。
 結果として呂布を滅ぼすことになってしまった言葉ですので、何と言うかこう、漢の忠臣という貂蝉像とそぐわない気がするんですよね。こういう惰弱な発言は...
 好く見ようと思えば、漢室の癌である呂布を取り除く一功となったとも言えます。でも厳氏とセットにされてるわけですし、やっぱりここからは、連環計以前の、義・貞・孝・忠にあふれる姿は感じられません。
 で、ちょっと思ったんですけど、前に読んだ伊藤先生の論文にある通り、かつての貂蝉呂布を滅ぼす悪女として描かれていました。なのでここでの貂蝉がいかにも傾国の美女っぽく描かれてしまったのは、その頃の名残なのかなー、なんて思いました。