「三国志 Three kingdoms」全95話を観る その5
第5話「三英傑、呂布と戦う」
◆袁術
僕は正直、全体で言えばTKのキャスティングはちょっといまいちだなあと思ってます。こういったことにはまるで詳しくないのでこの感覚を具体的に言葉にはできないのですけど、たとえばレッドクリフの方が―制作規模的に比べちゃ悪いんですけど、ずっとイメージに合う。
ただし、その中でも抜群にこりゃすげえ!と思ってるのが何人かいて、そのひとりがこの袁術(演:閻佩)です。何でかわかんないんですけど、この人の袁術はたまんないです。偉そうで、不機嫌そうで、陰気で。なんというか、小物っぽくなくかつ嫌な奴なんですよ。
袴田郁一『マンガでわかる三国志』は、『演義』のなかで袁術ほど最高のやられ役はいないって言ってますが、しかし最近の三国志だとさすがにそのイメージが先走り過ぎで威風がなさすぎです。猿じゃないかあれ。相応の風格があってこそやられ役としての格も上がるというものですし、かと言って袁紹みたいな華やさもできれば袁術にはない方がいい。TKの袁術は僕のイメージにぴったりでした。
こいつが早く皇帝になるとこが見たい、そう思わせてくれる袁術です。
◆劉三刀・韓融・王沖
光の速さで死んでた三将軍。ナイスカット。
なお『演義』で呂布が斬ったのは方悦・穆順・武安国。なんで別のオリキャラにしたんだろう。
◆公孫瓚
ここまで劉備との関係には触れられず、バカ諸侯のひとりとしか描写されてないですけど、界橋の戦いはどうするんだろう。
◆三英雄、呂布と戦う
3対1の斬り結び、しかも馬上でとなると映像化するのはかなり大変そうですけど、かなりカッコよく仕上げてました。カメラワークで誤魔化してるって言えばそうではあるんですけど、それでも丁々発止、とても見ごたえがありました。
TKは殺陣が下手くそだって言う人もいますけど、まあちゃんと全部観てないんでしょうね。反省していただきたい。
◆三つの家の奴隷め!
三つの家の奴隷め!
三つの家の奴隷め!
三つの家の奴隷め!
三つの家の奴隷め!
三つの家の奴隷め!
……どうにかならなかったのか。
とはいえ、もともと張飛の台詞は俗語ばかりで翻訳がとても難しいと言われてますし、しかも罵倒語ですし。その上、劇中の張飛が「三つの家の奴隷(三姓奴)」の意味をご丁寧にも説明してくれちゃってるので、別の言葉を借りてくるわけにもいかないし。さもありなん。
張飛の罵倒と言えば、こことは関係ない場面なんですけど、『吉川三国志』にこんな一幕があります。
「吝ったれ奴!二百匹ばかりの軍馬がなんだ。あの馬を奪りあげたのは、かくいう張飛だが、われをさして強盗とは聞き捨てならん。おれが強盗なら汝は糞賊だ」
「なに、糞賊?」
呂布もまごついた。世にさまざまな賊もあるが、まだ糞賊というのは聞いたこともない。張飛のことばは無茶である。
「そうではないか!汝は元来、寄る辺なく、この徐州へ頼ってきた流寓の客にすぎぬ。劉兄のお陰で、いつのまにか徐州城に居直ってしまい、太守面をしているのみか、国税もすべて横領し、むすめの嫁入り支度といっては、民の膏血をしぼり、この天下多難の秋に、眷族そろって、能もなく、大糞ばかりたれている。されば汝ごとき者を、国賊というのももったいない。糞賊というのだ。わかったか呂布っ」
張飛の悪態を表現するため、いっそ言葉を作っちゃう吉川英治。さすがであります。

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