三国与太噺 season3

『三国志演義』や、吉川英治『三国志』や、日本の関帝廟なんかに興味があります。

日本の三国志

村上知行 『三国志物語』(昭和14年)

村上知行著、『三国志物語』は昭和14年に中央公論社から全3巻で出版された、「三国志演義」の翻訳本です。ただ全文完訳ではなく、作者によれば「三国志演義」の文章はあまりに冗長であるため、不用の部分、興味の乏しい部分を省略して訳したものだという…

吉川三国志 【劉安】

彼の嫁スープがなぜ高く評価されているかについては、渡邉先生と仙石先生の共著『三国志の女性たち』が詳しく、面白いのでぜひ読んでみてください。 また劉安は『三国演義』の架空の人物ですのでこの行為も宋明時代の価値観に基づいていると思われますが、た…

吉川三国志、書誌のまとめ

◆初出 「中外商業新報」(現・日本経済新聞)夕刊一面連載*1 昭和14年(1939)8月26日〜昭和18年(1943)9月5日*2 (連載予告が14年8月24日の朝刊夕刊両方に掲載) ◆所収*3 ・初収版*4 大日本雄弁会講談社、全14巻(昭和15年〜21年) ・六興八巻版…

吉川三国志、修正された序文

昨日に引き続いています。 「三国与太噺」‐吉川三国志、新連載の予告記事 吉川英治『三国志』はそのアタマに、吉川先生による「序」を収録しています。これはそもそも昭和15年、最初の単行本化に際して書かれたものであり、以降『三国志』が再版される度に…

吉川三国志、新連載の予告記事

1939年8月26日より中外商業新報などで連載を始めた吉川英治『三国志』ですが、それに先だって24日の夕刊に新連載の予告記事が出されていました。 作者が、新聞社が、この新連載をどのように考えていたかアピールしようとしていたか端的に窺えて、な…

吉川英治『三国志』(4) 〜呂布の死

北方、宮城谷、蒼天航路、無双、、、 などなど各ジャンル様々な"三国志入門"が躍動する現代にあってもなお色褪せない吉川三国志を改めて読み返してみた感想です。 呂布の乱なのに感想があまり・・・ない、、 ●手製の玉璽(講談社文庫版(1980)第2巻p237) けれ…

吉川三国志 【貂蝉】

元々『演義』以前からの民間説話を出身とする貂蝉。なので小説や演劇によってその結末は様々なのですが、吉川三国志のような連環の計と共に自害するパターンはおそらく初めてなのではと思われます。*1。 原典『三国演義』では貂蝉の結末は描かれないまま、呂…

吉川英治『三国志』(3-b) 〜董卓の乱

北方、宮城谷、蒼天航路、無双、、、 などなど各ジャンル様々な"三国志入門"が躍動する現代にあってもなお色褪せない吉川三国志を改めて読み返してみた感想です。 ●曹操の家系 王允もいったとおり、彼の家柄は、元来名門であって、高祖覇業を立てて以来の――…

吉川英治『三国志』(3-a) 〜董卓の乱

北方、宮城谷、蒼天航路、無双、、、 などなど各ジャンル様々な"三国志入門"が躍動する現代にあってもなお色褪せない吉川三国志を改めて読み返してみた感想です。 ●定州の劉恢 『演義』でちょこっと登場する架空の人物ですが、安喜県尉を棄てた劉備たちを保…

并州刺史丁原 その1

以前書いたこちらの記事の続きになります。 荊州刺史丁原(2011/4/4) 本来は并州刺史であった丁原が、演義類では"荊州"になっているということを、董卓と丁原の対決の場面から書いたのが前回の記事になります。 しかしこの部分を見逃しておりました。原文は李…

『演義』版本で見る黒歴史 【夏侯傑】

『三国演義』の各版本によって、長坂橋で張飛に大喝されて落馬する人物が「夏侯傑」と「夏侯覇」とで異なっているらしいけどそこんところどうなのか。 というネタを先日いただきまして、大学に行ったときに見て参りました。追記で示しているように十種ほどの…

荊州刺史丁原

その時、ひとりが宴卓を押しのけてつかつかと進みいで、大声に叫んだ。……董卓が見れば、荊州の刺史丁原である。(立間祥介訳『三国志演義』第三回) 『魏書・呂布伝』によれば、丁原は実際には荊州刺史ではなく、并州刺史・執金吾を歴任している(沈伯俊『三国…

雑喉潤『三国志と日本人』

三国志と日本人 (講談社現代新書)作者: 雑喉潤出版社/メーカー: 講談社発売日: 2002/12メディア: 新書購入: 2人 クリック: 7回この商品を含むブログ (7件) を見る近頃吉川々々と言ってましたら、ツイッターにて薦めていただいた一冊です。先日から挙げている…

『吉川三国志』と『通俗三国志』の関係

『吉川三国志』が『通俗三国志』に影響されていることは、魏延暗殺未遂や漢の寿亭侯など、現代のぼくらが普段手に取る「日本語訳『三国志演義』」にはない、李卓吾本特有のエピソードを盛り込んでいることからよく知られています。 ですがさらに細かく見ます…

続・孫韶、出自の謎

昨日の記事の続きで孫韶です。 「三国与太噺」孫韶、出自の謎 『三国演義』第七回の一文、 「堅又過房兪氏一子,名韶,字公禮。」 はこれまでの『演義』日本語訳においてどのように訳されてきたのか。自分が閲覧できた限りの日本語訳『三国演義』で調べてみ…

孫韶、出自の謎

(孫堅の)兪氏という寵妾にも、ひとりの子があった。孫韶、字は公礼である。(吉川英治『三国志』*1 ) そもそもは、この吉川孫韶の意外な出自設定に疑問を覚えたことが始まりでした。孫韶が孫堅の妾の子だなんて、ちょっと聞いたことないなと思ったんです。 孫…

吉川英治『三国志』(2-b) 〜黄巾の乱

北方、宮城谷、蒼天航路、無双、、、 などなど各ジャンル様々な"三国志入門"が躍動する現代にあってもなお色褪せない吉川三国志を改めて読み返してみた感想です。 今日は黄巾の乱の続き。 ●朱儁将軍 「ははあ。何処で雇われた雑軍だな」と、朱雋は、しごく冷…

吉川英治『三国志』(2-a) 〜黄巾の乱

北方、宮城谷、蒼天航路、無双、、、 などなど各ジャンル様々な"三国志入門"が躍動する現代にあってもなお色褪せない吉川三国志を改めて読み返してみた感想です。 今回は黄巾の乱まで。 ●劉備・関羽・張飛の容貌 腰に一剣、みすぼらしい身なり、眉は秀で、唇…

吉川英治『三国志』(1) 〜桃園決義

北方、宮城谷、蒼天航路、無双、、、 などなど各ジャンル様々な"三国志入門"が躍動する現代にあってもなお色褪せない吉川三国志を改めて読み返してみた感想です。 ●吉川三国志と『三国志演義』の関係 吉川三国志は随所随所にオリジナルを仕込んでいますが、…

前後の劉氏

「いつか書きたい『三国志』」―劉焉と劉表は、帝位を称した「てぃーえすのワードパッド」―後漢末の劉氏についての戯言 この話、ぼくにも心当たりがございます。 「お忘れかい阿備。おまえのお父様も、お祖父様も、おまえのように沓を作り蓆を織り、土民の中…