三国与太噺 season3

『三国志演義』や、吉川英治『三国志』や、日本の関帝廟なんかに興味があります。

2011-01-01から1年間の記事一覧

反骨の相

金旋が敗れ武陵城まで逃れると、鞏志は城上に立って曰く「汝は天の時に従わず自ら敗亡した。私は百姓と共に劉備に降るぞ」 言い終わらぬうちに一矢が金旋の顔面に突き刺さり、金旋は馬から落馬した。鞏志は城を出て降伏し、金旋の首を張飛に献上した。 劉備…

劉娥

劉聡の建元元年正月、流星が平陽の北十里に落ちた。 それを見れば"肉"で、その臭いは平陽まで届き、哭き声は昼夜止むことがなかった。 数日後、皇后の劉娥が蛇と虎を産んだ。二匹は暴れまわって逃げ出したが、その後"肉"の傍らで見つかった。 この時、劉聡は…

劉娥と劉英

劉聡の妻の劉娥は字を麗華といい、太保劉殷*1の娘である。劉聡は召して右貴嬪として甚だ寵愛した。劉娥は皇后を拝し、……薨去するに及び、武宣皇后と諡された。 その姉妹の劉英は字を麗芳といい,劉娥と共に召されて左貴嬪を拝した。武徳皇后を追諡された。 ―…

劉芳

皇后の劉氏は病が篤くなると、泣きながら「妾の叔父劉昶は子がなく、妾を幼い頃から養ってくれました。今その恩に報いたく思います。また妾の叔父劉皚の娘の劉芳は徳色が備わっておりますので、願くば彼女を後宮に入れていただけますよう」と訴えた。言い終…

柴田錬三郎『柴錬三国志』(昭和41年)

卒論の没ネタを横流し(´・ω・`) 正式なタイトルは『英雄ここにあり』。昭和41年から43年まで連載。*1 いわゆる『柴錬三国志』ですね。『秘本』や『北方』などと並んで現代でも割とポピュラーな「三国志小説」だと思います。 ストーリーは桃園結義から出師…

貂蝉の再登場

呂布は陳宮の言を聞きても心を決めることができず、貂蝉に打ち明けた。貂蝉が曰く「将軍は私を思って、軽々しく城から出ることありませんよう」呂布曰く「憂慮することなかれ。我に画戟と赤兔馬あり、誰があえて近づけよう」……呂布はこれ以降終日出ることは…

廖化、長寿の謎について

廖化は元黄巾賊である。 廖化は蜀漢の滅亡後に死ぬ。 黄巾の乱で20才ほどだとしたら、没年は100才! この謎に対してネットでは、以下の「三国志博物館集解」さんの様に、廖化が黄巾賊という設定が演義の創作であることを指摘、よって廖化の長寿も演義の創作…

『反三国志』華歆と『三国志演義』李儒の最期

「今日の記事はいささか残酷な表現が含まれる」 「よってそれらが苦手な者は閲覧を控えた方がよい」 「仁者の風上におけん、まったくけしからん話だな」

第2回三国志感謝祭(11/5)

いよいよ今週に迫った三国志感謝祭ですね! ↓↓↓ 「三国志感謝祭公式ブログ」 昨年に続いた第2回、 ありがてぇ・・・っ!ありがてぇ・・・っ! 前売券もゲットヽ(゚∀゚)ノ 去年と同様の新宿ロフトプラスワンでの開催ですね。 僕は去年の感謝祭で初めてココに行…

『十二国記』に登場した『山海経』の妖獣

一年くらい前からずっと下書きに保存されていた記事です。(´・ω・`) そのうちちゃんと書ききろうと思っていたんですけど、面倒くさくなったのでぶっぱなしました。(´・ω・`) 【鹿蜀】 又東三百七十里,曰杻陽之山,…有獸焉,其狀如馬而白首,其文如虎而赤尾,其…

「諸葛亮にして死せざりせば」補足

先日こちらで記事にした架空三国志物語「諸葛亮にして死せざりせば」について。 作者は清朝雍正帝から乾隆帝期の夏綸という人。この人に「南陽楽」という戯曲があるのですが、その粗筋を久保天随が『新訳演義三国志』の付録として載せています。これが「諸葛…

『吉川三国志』のために

最近の検索ワードを見ていたら何やら吉川三国志の古い版本に関する単語がやけに目立ちまして、おそらく同じ方なのでしょうか?随分珍しいことを検索されているなと思いましたが・・・もしまだうちのブログをご覧でしたら、自分の分かる範囲で書ければと思い…

諸葛亮にして死せざりせば

先日京都に遊んだおり、「諸葛亮にして死せざりせば」と題する短篇が古い一冊の書物に収録されているのを発見しました。読んでみると、まさしく三国時代の戦争について記してあり、諸葛孔明の五丈原以降に関するすべての記述が、『三国志演義』と異なってい…

野村愛正『三国志物語』(昭和15年)

戦時中に出版された三国志モノには、代表的なものとして以下の四作品があります。 昭和14年に出版された村上知行『三国志物語』。 昭和14年から18年に連載された吉川英治『三国志』。 昭和16年に出版された弓館芳夫『三国志』。 そして昭和15年に…

三国志フェス2011

先々週末、蒲田で行われた「三国志フェス2011」では、主催の方々、来場されたお客様、スタッフの人たち、出展・出演された皆様、、、、などなど、皆様お疲れさまでした&ありがとうございました。 夢のような一日と言うか、三国志ファンを700人くらい一箇…

弓館芳夫『三国志』(昭和16年)

桑原武夫先生の論文「『三国志』のために」はその中で、当時(1942年)に受容されていた「三国志」創作として3つの作品が挙げています。吉川英治の『三国志』、村上知行の『三国志物語』、そしてこの弓館芳夫の『三国志』ですね 。『村上三国志』については以…

レジュメ「『吉川三国志』成立の過程と環境」

昨日までゼミに行っておりまして、これはそこで発表した時のレジュメです。 ぼくのレジュメなんでクオリティはアレなんですけど、せっかく作ったのにゼミ発表で使うだけじゃもったいないと思いまして、ぱなしておきましょう式ですね。 http://wiki.livedoor.…

池田東籬亭『通俗絵本三国志』

先日、うちのブログに「池田東籬亭 通俗三国志」のキーワードでいらっしゃった方がいらっしゃいました。 東籬亭をググってしまうなんて相当の猛者勢とお見受け致しましたが、もしこの方が池田東籬亭と『通俗三国志』の関係について基本的な情報を探しておら…

『通俗三国志』の校訂は行われていたか

元禄年間に出版された『通俗三国志』は当時大変な人気であり、明治に至ってなお多数の出版社から繰り返し刷られていました。現在国会図書館が蔵書しているものに限っても、実に27種にもなります。 それらにはそれぞれ校訂者がついており、その中には東亜堂…

三国志フェス2011の打ち合わせ

先週の日曜日、三国志フェス2011のボランティアスタッフとして打ち合わせにお邪魔してきました。 自分は去年の三国志フェス、最後のちょっとだけしか遊びに行くことができなかったんですけど、しかしそれでも、こんなにも三国志ファンがいたのかと驚かされ・…

幸田露伴校『通俗三国志』解題の要約

明治期にとっても沢山出版された『通俗三国志』群*1の中でも代表的なエディションである幸田露伴校訂の『通俗三国志』です。 東亜堂から明治44年に出版されており、「明治版『通俗三国志』」としては後発の部類ですね。上田望先生の分析によれば流行の第三…

劉備は十七代目

(献帝)又問玄紱、「祖宗何人。」 先主、「本祖十七代孫、中山靖王之後。先君漢靈帝、因十常侍弄權、落於百姓之家。」*1 陳寿『三国志』では不明である中山王劉勝と劉備までの間の系譜ですが、こちら『三国志平話』ではその間に17世代あったとしています。 …

劉備の初恋 【芙蓉姫】

『吉川三国志』の数少ないオリジナルキャラクター、芙蓉姫。吉川流が光る序盤を象徴するようなヒロインです。 吉川オリジナルでありがなら、横光三国志や柴練三国志、三国志大戦など他の創作・媒体にも時々姿を見せるなど、三国志の和製オリキャラとしてはけ…

吉川英治と張郃

苦徹成珠の吉川さんも"三国志"だけは、リラックスに書かれたようである。楽しんで書いておられる風でもあった。馬上からバラリンズンと斬殺した人物を、後の場面で活躍させて、飛んだ失敗したよと、吉川さんが苦笑したようなお愛嬌もあった。*1 やはり先生も…

吉川英治『三国志』の初版本

(*´ω`*)ドヤァ・・・ 昭和15年に大日本雄弁会講談社より出版された、吉川三国志の初版本! なかなか手に入らないと思われる初収本の、さらに初版です。国会図書館でも初収本は読めるんですけど、しかし何巻か欠落があり、また初版ではなく昭和17年の再版…

久保天随『新訳 演義三国志』序文の要約

久保天随『新訳 演義三国志』は、それまで湖南文山訳『通俗三国志』(李卓吾本訳)が大勢を占めていた日本においてし、初めての毛宗崗本完訳として1912年に出版されました。またあの吉川英治が少年の頃に愛読したとされていることでも有名です。*1 この叙…

桑原武夫「『三国志』のために」

☆桑原武夫「『三国志』のために」 (「文芸」(1942年8月)、所収『桑原武夫全集3』(1968) ) ○三国志への親しみ 天野貞祐『学生に与ふる書』に、幼い頃愛読したと回顧 筆者の親戚にも親しんでいる者多し。庶民への浸透も大きい ・『通俗三国志』による流行 神…

曹操の失言

徐母曰:「劉備何如人也?」 操曰:「沛郡小輩,妄稱皇叔,全無信義,所謂外君子而內小人者也。」(徐庶母が言う)「劉備とはどのような方におわしますか」 (曹操が言う)「沛郡のいやしい家の出で、『皇叔』とか言いたてておるが、実は信義を知らぬ、外見は君…

昭烈帝の系統

俺が許都行った時ヒキョウにも「どうやって劉備が皇族だって証拠だよ」って言ったがバカすぐる、お前は中山靖王勝つの後胤っていう名セリフを知らないのかよこの系図なら劉備が皇叔なのは確定的に明らか。宗正とかゆうジョブが読むと曹操は真っ赤にしてうつ…

村上知行 『三国志物語』(昭和14年)

村上知行著、『三国志物語』は昭和14年に中央公論社から全3巻で出版された、「三国志演義」の翻訳本です。ただ全文完訳ではなく、作者によれば「三国志演義」の文章はあまりに冗長であるため、不用の部分、興味の乏しい部分を省略して訳したものだという…